二度のロシア出張を行い、当該研究の対象であるソ連時代の女性雑誌『労働婦人』と『農業婦人』のバックナンバーの閲覧、複写作業を完了した。また、非合法の女性雑誌で未発見であった『マリーヤ』の全4号のうちの3号(ドイツで国外出版されたもの)を、ロシア国内の資料館で発見し、全号全頁を複写することができた。残り1号は、片岡みい子氏より譲っていただいており、これで全号を収集することができた。 著書『ロシアの女性雑誌』(仮題)を執筆し、すでに脱稿している。これは、本研究の成果が結実したものであり、ロシアの女性雑誌の300年間にわたる歴史を俯瞰した上で、20世紀の軸となるソ連時代の女性雑誌を中心に、雑誌というメディアがいかに女性の形象を理想化したかを論じたものである。公式・非公式の女性雑誌を本格的に紹介するものとしては日本で初の出版物となる。とりわけ、1970年代末以降、公式・非公式双方の主張が「女性の過重労働」という点で一致し、雑誌メディアが、理想よりも現実を取り上げる事態に至ったことは、独自の考察による結論づけである。群像社より年内に出版予定である。 論文「1920年代のソ連の女性雑誌における「新しい女性」の創出と短編小説の役割」を執筆し、『ロシア文化研究』第24号(早稲田大学ロシア文学会発行、2017年3月刊)に投稿・掲載された。本論は、当該研究で収集した資料(公式の女性雑誌)をもとに、とりわけ、ソ連期初期の「新しい女性」の形象の理想化が特徴的である1920年代に的を絞って考察したものである。同テーマは、その後の各時代ごとの考察へと延長される予定である。
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