研究課題/領域番号 |
15J07897
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 睦也 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 分散型方程式 / 適切性 / 線形評価式 / モジュレーション空間 |
研究実績の概要 |
非線形分散型方程式の初期値問題について研究し、以下の成果を得た。 まず、線形解に関連する相関数が多項式の場合に対する時間減衰評価式について考察した。既存の結果では時間減衰度は相関数の最大次数と最小次数に依存して決定されていた。しかし、相関数が持つ性質をもとに詳細に解析することで既存の結果よりも良い時間減衰度をもつ評価式を得ることが出来た。 また、時間周波数解析の一種である短時間フーリエ変換をもとに定義されるモジュレーション空間を用いた研究も行った。まず、べき型非線形項を持つ高次シュレディンガー方程式に対して応用し、新しいクラスに属する時間大域解を構成することが出来た。これは2007年にWang-Hudzikによって構成された時間減衰評価式の持つ時間減衰項に着目することで実現された。 次に、二次元上の一般化ザハロフ-クズネツォフ方程式に対する解はモジュレーション空間上では正則性がゼロでも時間大域的に適切であることがわかった。この結果は、最大関数評価式をモジュレーション空間の枠組みの中で新たに構成し直すことで得られた。また、得られた解は線形解に漸近することもわかった。 今年度は偏微分方程式論だけでなく、α-モジュレーション空間と呼ばれる関数空間についての基礎研究も行った。α-モジュレーション空間はモジュレーション空間とベゾフ空間を結びつけることを目的として導入された関数空間である。さて、Lpソボレフ空間とモジュレーション空間およびベゾフ空間との包含関係は完全なものがすでに決定されている。したがって、α-モジュレーション空間との場合にはどのように決定されるのかという自然な疑問が生じる。この疑問への答えとして、α-モジュレーション空間と同値なノルムを新たに構成することで、完全な包含関係を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のポイントである線形評価式の構成について、相関数が多項式の場合には改良することが出来た。また、モジュレーション空間の応用についても、べき型非線形項および分型非線形項を持つ分散型方程式の初期値問題に対して時間大域解を構成することが出来た。また、分野を超えての研究も行い、成果を得ることが出来た。以上のことから、おおむね順調に進展しているように思える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究内容としては、まず三次元上のザハロフ-クズネツォフ方程式でも二次元上のものと同様の結果が得られるかを考察したい。次に、「一般化」したものではなく、オリジナルおよび修正ザハロフ-クズネツォフ方程式についての研究を行う。また、当初の計画のうち、他と比べて多少進行が遅れている一般的な相関数に関する時間減衰評価式および時空間線形評価式の構成に関する研究にも注力し、掲げていた目標の達成を目指したい。
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