前年度では空間二次元での一般化ザハロフ-クズネツォフ方程式の初期値問題に対する適切性をモジュレーション空間の枠組みで考察した。その結果はWang-Huang(2007)による空間一次元でのg-KdV方程式に対する結果と類似したものであった。そのため、方程式のもつ構造の関連性から空間三次元以上でも同様の結果が得られるのではないかと予想していた。しかし、発展作用素の相関数の構造が二次元と三次元以上とでかなり異なり、性質がより複雑になるため、必要となるであろう時空間線形評価式が構成できておらず解決に至ってはいなかった。そこで、空間三次元以上でも同様の結果が得られるのかが本年度の課題の一つであった。 解の適切性を得るためにはいくつかの時空間に関する線形評価式が必要となるが、空間二次元の場合と同様、特に最大値関数評価式と呼ばれる評価式について考察した。上述のように、三次元以上では相関数の構造が複雑になるため、一次元や二次元の場合には出てこなかった困難さが新たに生じる。しかし、それぞれの場合分けの状況に応じて相関数の主要部とそれ以外の部分を適切に分け、各場合に対して適切な道具を用いることによってこの問題の解決することができ、全次元で同様の評価式を得ることができた。その結果として、この初期値問題の解の適切性をモジュレーション空間の枠組みで得ることができた。また、得られた時間大域解は線形解へ漸近することも分かった。 今年度は上記内容に加えて、(オリジナルの)ザハロフ-クズネツォフ方程式についての研究も行う予定だったため、この研究に必要であろうフーリエ制限法(ブルガン空間)に関する勉強を行っていた。しかし、フーリエ制限法についての論文が非常に難解であったこと、読むべき論文が非常に多かったことから、思うように研究を進めることができなかった。このことについては来年度以降も続けていきたいと考えている。
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