植物生産において、葉から収穫対象器官への光合成産物の転流は、収量と品質に直接影響を及ぼす重要な生理的機能であり、転流動態に基づいた合理的な環境管理技術が求められている。当該年度の研究では、イチゴ植物を対象にして、転流を律速する光合成産物の葉から師管へのローディングおよび師管から収穫対象器官へのアンローディングの動態の評価法を確立し、転流動態に基づいた省資源型の環境管理技術の提案とその実証を行った。 まず、炭素の放射性同位体(11C)を用いたRIイメージング技術を駆使し、イチゴの葉から果実への光合成産物の転流動態の可視化と時空間連続評価を行った。得られた定量的情報に基づいて、膜輸送タンパク質(スクローストランスポーター)による能動輸送に支配される葉でのローディングと果実でのアンローディングの動態を表現する動的モデルを構築および同定し、主要な気象環境要素(気温、光強度、CO2濃度)と果実の生育ステージで変化する転流動態のモデルによる再現を試みた。転流動態に関するRIイメージングと動的モデルによる情報を基に、ローディングとアンローディングの器官に限定した局所的な気温、光強度およびCO2 濃度の省資源型管理システムを提案し、冬季のイチゴハウス栽培において生理生態的効果および省エネルギー効果について実証した。イチゴ生産における収量増加および品質上昇を実現しており、転流動態に基づいた省資源型環境管理による高収量高品質生産の実現の可能性を提示した。
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