平成26年度に大阪大学核物理センターにて、加速された陽子(400MeV)と酸素・炭素の非弾性散乱反応により巨大共鳴状態を作り、NaI(Tl)検出器てガンマ線を同時測定した。平成27年度に基礎データの解析が完了し、平成28年度はさらに解析を進めた。 スペクトロメータ解析において、光学補正等の各パラメータを最適化し、より精度の良いデータを得た。その結果、反応断面積・角度分布を絶対値として約誤差10%で求めた。また歪曲波インパルス近似計算(DWBA07コード)との比較を開始した。 ガンマ線検出器解析では、線源を用いたテスト実験により検出器の線形性を評価し、実験に支障がなかったことを確認した。さらに、エネルギー較正の精度を向上させた。また、ビームの合計流量が増えるにつれガンマ線検出器の応答が変化することがわかったため、これを補正し全データの解析を行った。 全データを用いて、炭素原子核の巨大共鳴状態から放出されるガンマ線のエネルギースペクトルを、励起エネルギーを2MeVで区切って得た。そして放出率を絶対値として誤差約20%で求めた。その結果、放出率は励起エネルギーが1核子放出のエネルギー閾値を超えると上がり、多数の核子を放出するエネルギー閾値を超えると次第に下がることがわかった。また原子核の崩壊モデルに基づく理論計算を行い、実験データの振る舞いを再現することができたが、絶対値には違いが見られた。これは実験で得られた励起の量子数(アイソスピン、スピンパリティ)と理論計算に用いた量子数の違いに起因すると考察されるため、今後改良の必要がある。
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