研究課題
IRF8は樹状細胞(DC)、単球などの分化に必須の転写因子であり、IRF8による分化制御機構の破綻は慢性骨髄性白血病(CML)などの疾患に繋がる。我々はCMLの原因遺伝子(BCR-ABL)によってIRF8の発現が低下し、DCの分化が抑制されることを報告している。しかしながら、BCR-ABLによるIRF8抑制機構は未だに不明瞭である。また、定常状態におけるIRF8の発現量は分化段階によって緻密に制御されており、その発現量の違いが細胞の運命決定に重要と考えられる。我々は、転写開始点から離れた位置に存在し、転写を調節する領域(エンハンサー)に着目し、定常状態とBCR-ABL存在下におけるIRF8の発制御制機構について研究を行った。平成28年度までに、我々は培養細胞を用いてIrf8近傍に3つの活性化エンハンサー領域(E1、E2、E3)が存在することを明らかにした。平成29年度は、これらのエンハンサーが生体内においてどの分化段階で活性化するのかを検討した。IRF8はGMPにおいてわずかに発現しており、MDPへと分化が進む際に発現量が増加する。IRF8の発現はMDPがcMoPを経て単球へと分化する際には増加しないが、CDPを経てDCへと分化する際には発現が増加する。これらの細胞におけるエンハンサーについて調べた結果、E3は全ての前駆細胞で強く活性化し、DCでは弱い活性が見られること、E1は単核貪食細胞前駆細胞において強く活性化し、単球とGMPにおいては弱い活性が見られることが分かった。一方、E2はDCにおいてのみ活性化していた。従って、GMPにおいてE3がIrf8の発現を弱く誘導し、GMPから単核貪食細胞系へと分化が進む際にはE3とE1が協調して発現が増強、DCへと分化が進んだ際にはE2が、単球に分化が進んだ際にはE1がIrf8の発現を維持するのではないかと考えている。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Cell Reports
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