研究実績の概要 |
申請者はエイコサペンタエン酸により骨格筋の代謝の改善により運動による効果を模倣できないか検証することを目的としている。これまでにEPA添加により、ラット骨格筋細胞で脂肪代謝関連酵素およびミトコンドリアマーカーのmRNA発現量が増加することを明らかにしている(in vitro)。平成27年度はこれらについてタンパク質レベルでの解析を行った。ラット筋芽細胞株L6を分化誘導培地にて10日間培養を行い、筋管を形成させた。培地中に終濃度30 μMとなるようにEPAを添加し、120時間後にタンパク質を抽出し、脂肪代謝関連酵素であるピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDK)4およびミトコンドリアマーカーであるporinの発現量をウエスタンブロッティング法を用いて確認した。その結果、EPAの添加によりPDK4およびporinの発現量の増加が観察された。このことよりEPAはタンパク質レベルでも脂肪代謝関連因子の発現量を増加させることが示唆された。次に生体への影響を確認するためにEPAの経口投与試験を行った。4週齢のF344雄性ラットに10, 50, 250, 500, 1000 mg/kg体重の濃度でEPAエチルエステル(扶桑薬品工業株式会社 エパフィールカプセル3000)の投与を行った。投与から6時間後に骨格筋を摘出し、PDK4およびporinのmRNA発現量を確認した。その結果、EDL筋においてPDK4の発現量が250, 1000 mg/kgでvehicle群に比べ有意に増加することが明らかになった。また1000 mg/kg投与群ではporinの発現量も増加傾向にあった。これらの結果からEPAは生体においても脂肪代謝因子の発現量を増加させることが示唆された。上記のEPA単回投与試験より至適投与量を1000 mg/kg体重と決定し、この投与量で慢性投与試験を行う予定である。
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