研究課題
本研究はエイコサペンタエン酸(EPA)により骨格筋の代謝能力の改善により、運動による生体への効果を模倣できないか検証することを目的としている。これまでに30 μM EPAをラット骨格筋細胞に作用させると、核内受容体PPARδの活性化を介して脂肪代謝関連酵素およびミトコンドリアマーカーのmRNA発現量が増加することを明らかにしている(in vitro)。また、平成27年度までに同様の因子がタンパク質レベルでも増加することをラット筋芽細胞株L6から形成させた筋管を用いて明らかにした。またEPAエチルエステルのラットへの単回投与試験により遺伝子発現のピークは投与後6時間であり、その至適濃度は1000 mg/kg体重であることがわかった。今年度はEPAの長期投与試験(4週間)を行った。1000 mg/kgのEPAエチルエステルを胃ゾンデにより毎日経口投与を行った。投与から3週目に呼気ガス、4週目に筋持久力を測定し、飼育終了後、脂肪代謝関連因子の発現量を確認した。呼気ガスの解析より、EPA投与は酸素消費量、脂質酸化を増加させ、呼吸商を減少させた。筋持久力ではEPA投与群のほうが発揮張力の平均値は大きかったものの、有意な差は確認されなかった。qPCR解析より、これまでの成果に反し、EPA投与によりPPARδの標的遺伝子かつ脂質代謝を促進するPDK4, UCP3の発現量が減少した。その一方でミトコンドリアの生合成に関わるPGC-1αや脂質代謝優位な筋線維タイプのマーカーであるMyHC1の発現量は増加した。タンパク質レベルでは、遅筋型MyHC(脂質代謝優位)およびPDK4の発現量が増加した。2年間の成果として、EPAによって骨格筋の代謝能力が脂質優位に変化することが明らかになり、それはPPARδの活性化を介していることが示唆された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Muscle Research and Cell Motility
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