本研究では発振波長のシフトをベースとしたフォトニック結晶ナノレーザによる超高感度タンパク質検出の原理解明を目的としており、本研究では新たな原理として、タンパク質由来の電荷がカギとなっていることを提案し、昨年度はナノレーザの発振波長が表面電荷の変化に応答していることを実験的に確認した。そこで今回はその原理を解明することと、実際に微量のタンパク質の吸着によっても同様に表面電荷の変化が生じているかを検証した。前者に対しては、昨年度と同様にプラズマ暴露によってセンサ表面を帯電させた後、センサを構成する半導体基板のゼータ電位とフラットバンド電位の時間変化を測定した。その結果、ゼータ電位では暴露直後は正に帯電し、時間経過で徐々に中性へと戻り、フラットバンド電位も同様に暴露直後は負にシフトし、時間経過で徐々に元の値に戻った。これら時間変化と昨年度得られた暴露後の発振波長の時間変化は同じ振る舞いを示し、確かに発振波長が表面電荷に応答していることを確認した。この原理としていくつか検討した結果、フラットバンド電位の変化によるショットキー障壁高さの変化と半導体内部でのキャリア効果が最も有力であった。そこでプラズマ暴露後のセンサからの発光スペクトルを測定すると、時間経過でキャリアの蓄積量が変化しており、考察を裏付ける結果が得られた。一方、センサを構成する半導体基板に対して実際のセンシングと同様の低濃度のタンパク質を吸着させると、ゼータ電位をフラットバンド電位が変化した。これは微量のタンパク質の吸着でもセンサにとって有意な変化をもたらし得ることを意味している。以上二つの検証結果を合わせることで、本研究で提案したように、電荷の効果が超高感度タンパク質検出の原理となっていることが示された。
|