研究課題/領域番号 |
15J08100
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
風間 恵介 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 走行可能領域検出 / 自動運転 / 自己位置推定 |
研究実績の概要 |
本研究では、国土交通省が整備を進める「道路基盤地図情報」をベースにした2次元平面地図に基づく自己位置推定アルゴリズムを設計し、推定位置に基づく自動運転車両の運動制御を目的とする。解決すべき課題は1.観測値と2次元平面地図を対応付ける手法、2.試験車両を用いた性能評価、3.車両制御性能の向上である。1では慣性航法ユニットやLiDARなどの車載センサから得られる観測値をもとに走行可能領域を特定する。特定した走行可能領域を画像に変換し、2次元平面地図からも道路領域を抽出し、2つの画像から画像レジストレーション技術を応用して、自車両の位置を推定する。2については提案した手法の有効性を実環境で試験するために、自動運転車両を製作する。3は自動運転車両が目標軌道に追従するための動特性を検証し、実用性まで考慮したアルゴリズムを提案する。 本年度は1と2の課題を解決するために、①実験車両および実験環境の構築、②外界センサを用いた道路環境認識手法の提案に取り組んだ。まず①の試験車両には、GNSSや慣性航法ユニット、LiDARなどを搭載した。GNSSとLiDARは研究室保有のものを使用し,慣性航法ユニットは新規に購入した(31万円)。続いて②については、LiDARから取得できる距離情報を使って、走行可能な道路領域を特定する手法を提案した。成果を取りまとめ、国際会議での発表を行った(43万円)。この内容を現在学術誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は①実験車両および実験環境の構築、②外界センサを用いた道路環境認識手法の提案の2つの課題に取り組んだ。 ①については、昨年度に引き続いてトヨタ車体製コムスを自動運転可能な車両とするために、(1)走行距離計測方法の変更、(2)外界センサの取り付けを行った。(1)では、以前は車載のインホイールモータの信号から各輪の速度を計測していたが、モータ自体の不調と信号に含まれる雑音の影響で正確な計測が難しかった。そこで本年度はモータを新調し、車輪の回転数を計測することにした。車輪の内側に反射テープを貼り、そのテープにレーザー光を照射し、その反射回数をカウントすることで車輪の回転数を計測、車両の移動量を算出する方法とした。(2)は車両上部に32層LiDARを取り付け、道路形状や周辺環境を観測可能にした。 ②では車両に搭載したLiDARを使用して、道路領域を検出することに取り組んだ。3次元LiDARの情報群から道路領域とその他の領域を識別する識別器を作成し、2次元地図上の道路形状と実際に識別した道路形状との位置合わせを行うことで、ロバスト性に優れた自己位置推定が実現できると考えた。本年度はその中で、3次元LiDARの情報群から道路領域とその他の領域を識別する識別器を作成し、道路領域を正しく検出する手法を提案した。3次元LiDARが出力する距離データの勾配方向を計算することで、道路領域だけを抽出することが可能だと考えた。距離データから距離勾配ヒストグラムを計算して、サポートベクターマシンという機械学習の技術でその特徴量を道路領域とその他の領域に識別した。この成果は国際会議で発表を行った。現在学術誌Journal of Robotics and Mechatronicsへ論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、①昨年度提案した道路領域検出手法を応用した自己位置推定手法の構築、②実験車両を使った提案手法の有効性検証、③位置推定に基づく自動運転の行動計画の3つの課題に取り組む。 ①については、検出した道路領域の点群を画像情報に変換し、参照地図画像との位置合わせを行うことで自己位置を推定する手法を提案する。画像レジストレーションという画像処理の技術と、カルマンフィルタという信号処理の技術を組み合わせることで、従来手法よりも推定精度が高く、情報量の削減と演算速度の高速化を実現することが目標となる。 ②については、提案した手法を実験車両に実装し、公道で取得したデータを使って手法の性能評価を行う。この成果を国内学会で発表し、論文にまとめる予定である。 ③については、現在位置から作成される目標軌道への追従性能を検討するために、車載カメラによる前方注視点追跡手法を提案する。そのために、車載カメラで精度よく検出可能な30m付近に注視点を配置した際の車両の目標軌道追従の動特性を解析し、問題点を整理する。従来よりも車両近傍を注視することができ、車両横変位の応答性を向上させることが目標となる。
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