研究課題/領域番号 |
15J08103
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
佐久間 彩記 千葉大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | デザイン評価 / グッドデザイン賞 / デザイン樹形図 / デザインプロセス / 評価プロセス |
研究実績の概要 |
【研究計画】本研究はデザインの創造行為にたいする評価行為に着目した研究であり、過去のデザイン評価が及ぼした影響を考察し、次なる創造行為に効果的な評価を与える項目を明らかにすることが目的である。デザイン評価による価値創造の実現とそのプロセスの構築を目指すため、今年度は代表的なデザイン表彰制度であるグッドデザイン賞を調査しデザインの変遷及びデザイン評価の変遷を辿り、評価される価値とその評価項目の解明を試みること、価値と評価項目の関係性から新たな価値を創造するプロセスの検討を計画した。 【研究内容】デザイン評価の調査として、2015年度のグッドデザイン賞審査に帯同し、評価視点である産業視点・利用者視点、有形・無形の区分に合わせて調査した。審査員の言動を中心に撮影し1828分に渡る会話内容の文字起こしを行った。 57年にわたるグッドデザイン賞の歴史を5段階に分類し、社会事情に合わせた価値基準を確認した。産業領域の拡充・新たな価値基準の登場・領域の多様化複雑化はデザインの評価と密に関係していると改めて考察され、デザイン対象の領域変化を樹形図として体系化した。過去の審査コメントを収集し、デザイン領域の変化に合わせ評価された関連語句を抽出、領域変化と同様な形で評価語句を整理することで各段階における評価目的と評価対象の関連を明示した。これらによってデザイン評価項目を目的と種類によって、各時代に分けて分類した。 デザイン樹形図の枝分かれ点であるデザイン領域が拡大される際のデザイン評価に着目し、領域開拓のプロセスを考察した。筆者はこの領域開拓がデザインにおける新たな選択肢の創造、価値の創造であると捉え、デザイン評価が与える影響について考察した。領域開拓には技術革新・社会動向・経済状況などの関連事項が見受けられ、開拓したことに対する評価項目は明らかではあるが、領域開拓を導く評価項目は示されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【進捗状況】予定通り、過去から現在に至るまでのグッドデザイン賞審査概要及び審査プロセスを記述化することにより、入力データを収集、得られたデータをテキストマイニングにより分析が行われた。またその分析結果に対し、適切かつ詳細に考察を行い、デザイン評価のメカニズムを明らかにしさらにデザイン評価のあるべき方向性を明らかにした。それらの結果からさらに得られた考察点に対し再度調査し、それら成果を論文としてまとめ投稿を行った。
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今後の研究の推進方策 |
【今後の課題】領域開拓を導くデザイン評価項目の存在について、評価を与える対象や段階と評価に含有される意味合いについて考察を行った。デザインに評価を与える際、多くは創造された対象に対して評価を与えるが、創造する前の企画段階や創造中の製造段階においても評価を与えている場合がある。これは、今までの研究で重要視されていたデザイン意図の明確性と深く関わっており、デザイン意図の善し悪しを判断する基準の存在が指摘された。 そこで、デザインが製品開発フローに関わる業務を調査し、段階的にデザイン行為を分類する必要がある。主に商品企画とプロタイプ制作において評価が必要とされており、判断基準の明確化を行う必要性が示された。同時に、評価に含まれる期待と効果について整理し、期待する効果と得られた効果の両者の区分を明確にする必要がある。 また、領域開拓、価値創造を導くデザイン評価に関連する語句は調査の中では示されなかった。これは価値として認められた結果に対する評価が主として述べられ、これから導くべき価値への希望や促進意見などが独立して見受けられなかったことが要因と考えられる。先述したように、デザインの開発段階別に判断基準を整理することで評価による価値創造プロセス構築の検討を目指す必要がある。また、段階別にしたことによって評価と期待、効果に関連する語句や関係性が複雑化するため、明確な整理と定義づけを行うべきである。
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