研究課題/領域番号 |
15J08117
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小松原 晃 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 定量生物学 / ゲノム編集 / CRISPR/Cas9 / FCS / FCCS |
研究実績の概要 |
PI3K-Akt-mTOR シグナル伝達経路は、細胞増殖や生存に関連し、この経路の遺伝子の恒常活性化型変異は多くの悪性腫瘍で発見されている。またmTOR はオートファジーの主要な制御因子であることからも、オーファジー、マイトファジーと癌の関連は示唆される。しかし、上述のように、オーファジーやマイトファジーの癌への関与については未だに定量的に解明されていない。その主要な原因として、mTOR シグナル伝達経路の解析自体が比較的新しく、ほとんど定量的な解析がなされていないことが挙げられる。そこで本研究では、mTOR分子の活性制御について調べるため、蛍光タンパク質で内在性mTORや関連分子を標識し、PI3K-Akt-mTOR経路を定量的に解析、数理モデル化することを目指す。本年度は以下のように研究を実施した。 (1)CRISPR/Cas9によるGFP遺伝子のノックイン細胞の樹立 まず、CRISPR/Cas9を用いて、MAPK1遺伝子の末端にmEGFPの挿入を試みた。当初は、ssODNにFRTサイトとホモロジーアームをもたせ、標的部位にFRTサイトを組み込み、その上でmEGFPをFLPによって導入する手法に挑戦していた。この方法でEGFR遺伝子のC末端にmEGFPがノックインされた細胞を得たものの、確率が低いことや、非特異的な遺伝子挿入の影響が大きいという問題があった。そこで、neomycin耐性遺伝子に40bpのホモロジーアームをつけたものをドナーベクターとして使用した。G418によるセレクション後、得られた細胞の半分以上においてMAPK1へのmEGFP挿入が確認された。 (2)FCSを用いた細胞内タンパク質濃度の測定 次に、MAPK1-mEGFP細胞をガラスボトムディッシュに撒き、FCSによる濃度測定を試みた。過去に報告されて居たERK2の濃度は680nMであったが、今回の結果は352nMとなった。これは対立遺伝子の片側のみにノックインされた結果と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術を用いた高効率な遺伝子ノックイン手法の開発を行った。ドナーベクターの改良を行い、ノックインされた細胞を高効率に採取できる手法を開発した。これにより、内在性の分子にGFPなどの蛍光タンパク質を融合させることができた。またこの細胞を用いて、蛍光相関分光法(FCS)と組み合わせることで内在性の分子の数を生きた細胞で測定することが可能となった。期待通りの研究の進展が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
内在性分子の蛍光タンパク質による標識および濃度測定が可能となったので、今後mTOR、Raptor、Rictorなどの分子にも蛍光分子をノックインを試みる予定である。これによってPI3K-Akt-mTOR経路の定量、解析を目指す。
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