研究実績の概要 |
本研究では、高移動度環状電子輸送材料群の開発と自己組織化による機能発現を目的とした。自己組織化能を付与するべく、ピリジン環の水素結合に着目しビピリジン骨格を有する新規なBpy誘導体(4,4′-BPy3, 6,6′-BPy3)を設計・合成し固体薄膜特性を評価した。分子構造を同定するために、1H NMRと単結晶X線回折を行なった。その結果、 Bpy誘導体は分子内水素結合を形成し平面性の高い中心骨格を有しており、電荷輸送に有利なカラムナー構造の形成が確認された。また、分子間の多点水素結合が観測された。Time-of-Flight (TOF)法により電子移動度を評価した結果、10-4 cm2/Vsを示した。これは、一般的な電子輸送材料のTPBiよりも約10倍の高移動度である。さらに、多入射角分光エリプソメトリーによる固体薄膜の配向解析の結果、BPy誘導体は基板に対して水平方向に分子配向を示した。この水平分子配向が移動度向上の要因のひとつと考えた。また、薄膜中の分子配向が生じた理由として、結晶中と同様に分子間水素結合の形成がπスタック構造をサポートしたと考えている。有機EL特性の評価を行ったところ、 6,6′-BPy3 が実用的な輝度100cd m-2において、駆動電圧2.8 V、電力効率92.4 lm/W、外部量子効率23.0%を示した。この特性は、TPBiを用いた素子と比較して1.3倍の効率であった。以上の結果より、自己組織可能を有するBpy誘導体の電子輸送材料としての有用性を示すことができた。
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