研究課題
膝関節内の軟骨下骨の構造的変化は関節軟骨の変性を加速し、変形性膝関節症の発症、進行に関与するとされている。適度な運動は抗炎症性作用を示し、関節軟骨変性を予防することが明らかにされているが、軟骨下骨の構造的変化に与える影響は不明である。昨年度では、緩徐な運動負荷は関節軟骨変性だけでなく、軟骨下骨の構造的変化を抑制し、変形性膝関節症の進行予防に寄与することを、変形性膝関節症モデルラットを用いた実験により証明した。今回我々は、同モデルラットを用い、緩徐なトレッドミル運動による変形性膝関節症の進行予防に、骨形成蛋白(BMP)が関与していることを明らかにした。まず、同モデルラットに対して、軽度な関節軟骨変性や軟骨下骨の骨吸収が生じる術後4週時まで自然飼育した。その後、2種類の強度(12m/分、21m/分)のトレッドミル運動を1日30分、週5日、4週間に渡り負荷した。すると、緩徐(12m/分)な運動を負荷した場合にのみ、関節軟骨表層におけるBMP、BMPR2、pSmad-5、Id-1陽性軟骨細胞は有意に増大した。そこで、緩徐トレッドミル運動後にBMPの細胞外inhibitorであるGremlin-1を関節内投与すると、Gremlin-1濃度依存的にBMP、pSmad-5、Id-1陽性軟骨細胞数は減少し、緩徐な運動によって生じる関節軟骨変性予防効果や軟骨下骨の骨吸収抑性効果をブロックした。以上の結果は、運動は強度依存的にBMP発現を制御し、変形性膝関節症の進行予防に関与することを示唆しており、ヒト変形性膝関節症の進行予防策開発につながる成果と言える。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Osteoarthritis and Cartilage
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10.1016/j.joca.2016.12.008