研究課題/領域番号 |
15J08218
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大﨑 修司 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | MOF / 多孔性配位高分子 / ZIF-8 / マイクロリアクター / 微粒子合成 / 粒径制御 / 形状制御 / ゲート吸着 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ソフト多孔性錯体(SPC)が示す構造転移挙動を伴う特異な吸着挙動(ゲート吸着)を粒子サイズにより制御し,所望の条件でのゲート吸着を示す材料設計への展開を図るものである。本年度の年次計画では「マイクロリアクタを用いたSPC粒子の粒子サイズ制御を可能とする合成手法の確立」であった。そこで,SPCの一種であるZeolitic Imidazolate Framework-8(ZIF-8)を対象に検討を行った。その成果として,1. マイクロリアクタを用いたZIF-8粒子の粒径/形状制御手法の確立,2. ZIF-8粒子が示すゲート吸着挙動の粒径/形状依存性の発現,が挙げられる。 1.原料濃度および反応温度が得られる粒子の粒径/形状に与える影響を検討した結果,原料濃度および原料濃度比の増加に伴い粒径が減少すること,反応温度により形状が変化することを見出した。その上で,粒径はマイクロリアクタでの混合時に発生する核の数に依存する一方で,形状は粒子成長過程における反応温度によって決まることを明らかにした。さらに,核生成過程と粒子成長過程においてそれぞれ異なる反応温度を設定し,粒径と形状を独立に制御することに成功した。添加物フリーの合成手法により精密な粒径/形状制御に世界で初めて成功し,さらに,粒径と形状の独立した制御を可能とする本手法はマイクロ流通系の利点を最大限に生かした結果であり,独自性を有しているといえる。 2.粒径/形状の異なるZIF-8粒子の吸着特性を調べるために吸着等温線(N2@77 K,Ar@87K)を測定した。その結果,両ガスにおいて粒径の減少に伴いゲート吸着/脱着圧が高圧側へとシフトすること,および形状によりゲート吸着圧のみ変化することを明らかにした。添加物フリーの合成により得られた粒子への測定であり,粒子表面に存在しうる添加物の影響を考慮する必要のないため,ゲート吸着の「正確な」粒径/形状依存性の評価に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SPCの一種であるZIF-8を対象に検討を行い,マイクロリアクタを用いることでZIF-8の粒径・形状制御を可能とする合成手法の確立に成功し,かつ,粒径・形状によるゲート吸着挙動制御の可能性を示した。このとき,粒径はマイクロリアクタでの混合時に発生する核の数に依存する一方で,形状は粒子成長過程における反応温度によって決まることを明らかにし,ZIF-8粒子の形成機構に関する知見を得られ,SPC粒子の合理的設計指針提示への糸口を掴むことができたと考えられる。 これらの成果は,ZIF-8のみの検討ではあるものの,目標達成へと直結する重要なものであり,おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に確立した合成手法が他のSPCに適用可能であるか検証を行う。具体的には,Elastic Layer-structured MOF(ELM-12)を対象に,原料濃度,反応温度を変化させつつELM-12の合成を行い,反応条件と得られる粒子サイズとの関係を明らかにする。核生成理論を基に,合成によって得られる粒子サイズの予測が可能となる合成モデルを構築する。さらに,合成した種々の粒子サイズを持つELM-12に対して吸着測定を行うことで,粒子サイズおよび粒子表面がゲート吸着に与える影響を系統的にまとめる。 その上で,SPCが示すゲート吸着挙動の粒径・形状依存性発現のメカニズム解明を目指す。SPC結晶層と気相領域を設定したシミュレーションセルを構築し,分子シミュレーションを援用した自由エネルギー解析結果と実験結果を比較検討することで,ゲート吸着の予測モデルを構築する。 以上のように,SPCの合成手法の確立および吸着挙動の予測モデルから,合理的設計指針の提示を目指す。
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