平成27年度における報告者の研究活動は、大きく二つに分けられる。 ①ひとつは自伝作品一般の生成に関する関心に端を発した作家研究であり、この点に関して報告者はこれまで研究対象としてきたロラン・バルトの自伝作品の生成に関する予備的考察をとりわけ演劇論の観点から行い、論文として発表した。 ②もう一つは前ロマン派を代表する作家であるシャトーブリアンの伝記的作品『ランセの生涯』をめぐる分析であり、とりわけ七月王政下における「老い」の歴史的含意を検討した。この成果は学会にて発表された。この分析は、一生涯の表象がとりわけ「老い」の主題の多層性によって特色づけられていることが指摘された。自伝研究の隣接分野と考えられる「伝記」「聖人伝」におけるこうした知見によって、次年度以降計画している自伝(回想録)との同主題に基づく比較研究のための基礎となるものである。
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