陽子・陽子衝突型大型加速器LHCでのATLAS実験のデータを用いたグルイーノと呼ばれる超対称性粒子の探索を行った。今年度は昨年まで研究してきた機械学習とクオーク/グルーオン分離という技術を用いた新しい解析手法での探索を、昨年度までに取得した36.2fb-1のデータを用いて行った。 本解析のターゲットとなるグルイーノの崩壊過程ではジェットとして生じるのはグルーオン由来のジェットではなくクオーク由来のジェットである。この点は従来まで使われてこなかった情報であるが、クオーク由来のジェットを積極的に選択することで、感度向上が見込めることが昨年度までの研究で分かった。そこで、今年度はまず、このクオーク/グルーオン分離に用いるための変数の選定とMonte Carlo シミュレーション(MC)におけるその変数の評価を行った。クオーク・グルーオンを分離することのできる変数としては検出器のレスポンス依存性の少ないジェットの幅を実際の解析に用いることに決めた。MCにおいてこの変数がどのくらい再現できているかを確認するために、データからクオーク/グルーオンのジェットの幅の分布を抽出し、その形をMCでのそれと比較して、MCにおけるジェットの幅という変数の補正と系統誤差を求めた。 ジェットは4本存在するので、その4つのジェットの幅という変数を機械学習で学習させる入力変数として新たに追加して、ジェットの幅も含めたより良い事象選択を機械学習によって導出し、実際にデータを用いて探索を行った。残念ながら感度改善した新しい解析手法でグルイーノらしき兆候を発見することには至らなかったが、質量が2TeV付近の重いグルイーノにおいて、崩壊過程で生じるニュートラリーノの質量方向に対して200--400GeV 程度感度を伸ばして探索することができた。
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