研究課題
今年度の実験計画に基づき、バクテリアタンパク質膜透過装置SecYEGの結晶構造を明らかにするための実験を進行させた。これまでに、SecYEの構造はいくつか報告されていたが、SecGを含む複合体の4オングストローム分解能を超える構造は明らかとなっていなかった。そこで、SecYEGの高分解能構造決定を目指し、研究を行った。高度好熱菌由来のSecYEGを大腸菌内で発現させた後、各種カラムクロマトグラフィーを用いた精製を行い、結晶化に十分な純度でのタンパク質を取得した。LCP法による結晶化を行い、スクリーニングの結果、測定に必要な大きさの単結晶を取得した。大型放射光施設SPring-8における測定により、最高で2.7オングストローム分解能のデータセットの取得に成功した。以前に報告されているSec複合体を用いた分子置換法により、位相決定を行った。構造決定により、これまでの報告では見えていなかったSecGのフレキシブルなループがSecYのサイトプラズム側の孔を塞ぐように位置していることが明らかとなった。システインクロスリンク実験により、SecYとSecGのループが相互作用することを確認した。このループをSecYに固定すると、基質タンパク質の膜透過反応が妨げられた。構造情報とこれらの結果より、これまで役割が不明であったSecGのループは、静止状態のSecYの孔を塞ぐ役割があることが考えられた。これらの結果をまとめ、新たなモデルを提唱した(Tanaka et al., Cell Rep. 2015 )。その後、膜透過反応をより詳細に理解するため、SecYEGと協力して膜透過反応を行うとされるいくつかの因子の構造決定を目指し、研究を進めた。現在、複数の複合体の結晶取得に成功し、構造決定を試みている。
2: おおむね順調に進展している
Secトランスロコンの高分解能構造解析に成功し、その構造情報を基にした機能解析をとあわせて新たなモデルを提唱した。今後はより高次のSec複合体の構造解析達成を目指す。
引き続きより高次のSec複合体の構造決定をすすめる。構造が決定できれば、構造情報に基づいた遺伝学的、生化学的なアッセイにより膜透過現象の詳細な解明を目指す。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Cell Reports
巻: 13 ページ: 1561-1568
10.1016/j.celrep.2015.10.025.