研究課題
今年度の実験計画に基づき、バクテリアタンパク質膜透過装置Sec膜タンパク質複合体の結晶構造を明らかにするための実験を進行させた。特に、プロトンの濃度勾配を利用しタンパク質膜透過を促進するSecDF複合体に注目して研究を進めた。SecDF は膜貫通領域とペリプラズム側の可溶性ドメインである PI-head、 PI-head と膜貫通領域をつなぐP1-base及びP4から構成される。 SecDFは機能サイクルの中でP1-headが細胞膜に近づいた「F型」、P1-headが細胞膜から遠ざかった「I型」と呼ばれる 2つの異なるコンフォメーションを取るとされてきた。 F型、I型ではP1-baseとP4は6本のベータシートから構成される安定な構造体に見えていたが、機能解析の結果から、この構造が変化する可能性が示された。そこでこの部位の形状が異なる新規構造の解明を目指した。これまでとは異なる結晶化条件においてSecDFの結晶を取得し、結果としてSecDFの新規構造を分解能2.8オングストロームで決定することができた。この構造は、 P1-head領域がF型よりも細胞膜に近づいた状態であったため、「超F型」と名付けた。超F型SecDFでは、 F型およびI型ではベータシートであったbase領域がベータバレルに組変わっていた。この構造変化のメカニズムを明らかとすべく、生化学的な実験を行った。その結果、超F型でのみ相互作用が確認された膜貫通領域の保存されたアルギニンとアスパラギン酸を置換すると、生体内で超F型構造を形成しなかった。この結果から、膜貫通領域の相互作用が細胞外領域の構造変化を制御する「リモートカップリング機構」が強く支持された。これらの構造情報と機能解析の結果をまとめ、SecDFの連続した一連の構造変化が駆動するタンパク質膜透過現象の作業仮説を提唱し、論文として報告した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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