研究課題/領域番号 |
15J08242
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三宅 克馬 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | X線 / 「ひとみ」 / HXI / DSSD / 半導体 / 活動銀河核 / セイファート |
研究実績の概要 |
「ひとみ」衛星搭載のHard X-ray Imager (HXI) に使用されるDouble-sided Silicon Strip Detector (DSSD) において、マイナスのエネルギーを持つイベントが出力される問題の原因究明のための実験を行った。様々なエネルギーのX線をDSSDに照射することで、低エネルギーほどこれらのイベントの割合が多いことがわかり、これらはDSSDの表面付近で発生していると考えられることがわかった。またX線ジェネレータとコリメータを用いて、DSSD上の極小領域にX線を照射しつつ、照射領域を徐々に変えることで、このイベントがDSSDのストリップの隙間で発生していることを明らかにした。これらのエネルギー依存性や位置依存性は、先行研究で示唆されているような、「ストリップ間の表面領域で電場の向きが反転する」というモデルで説明できることがわかり、その領域のサイズを定量的に決定することに成功した。以上の結果をモデリングし、Geant4ベースのシミュレーションに組み込み、HXIの検出器レスポンスに反映させ、この効果があった上でもHXIが要求性能を満たすことを確認した。これらの実験結果について日本物理学会 秋季大会で講演した。 「ひとみ」打ち上げに向けて、衛星全体の熱真空試験に参加した。打ち上げ直前には種子島宇宙センターにおける最終試験にも参加。打ち上げ後の初期運用に参加し、HXIの立ち上げおよび初期観測運用を行った。HXIが正常に起動し、目標性能を達成していることを確認した。 セイファートI型活動銀河核IC4329Aの「すざく」データを時間変動スペクトル解析によって、当天体が複数の一次X線放射を持つことを明らかにしたことを論文にまとめ、PASJに投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Double-sided Silicon Strip Detectorの実験で明らかになった負のエネルギーイベントは、シリコン半導体検出器ならば一般に起こり得るものであることがわかり、これらをX線観測に利用する際に問題となるであろう事象を定量的かつ物理的に評価することができたのはとても意義深い。 「ひとみ」衛星は2016年3月末に通信不能に陥ったものの、既存の衛星で観測した活動銀河核のアーカイブデータを用い、それらを新しい切り口で時間変動解析することによって成果を上げることができている。
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今後の研究の推進方策 |
Double-sided Silicon Strip Detectorでの負のエネルギーイベントについて論文にまとめる。 NuSTAR衛星で観測された活動銀河核のデータに同様の時間変動解析を行い、硬X線でそれぞれの放射成分がどのような特徴 (カットオフなど) を示すのかを調べる。 セイファートI型に限らず、様々な種族の活動銀河核を系統的に解析する。
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