研究課題
平成28年度は、形態複屈折により複屈折の波長依存性を制御する手法について知見を深めることを目的とし、単独材料における複屈折の発現機構について詳細に検討した。得られた結果の総まとめを行い、形態複屈折を利用した機能性光学フィルムの設計指針を提案した。加熱一軸延伸、およびその後の応力緩和段階におけるセルローストリアセテート(CTA)の配向複屈折発現機構について検討した。加熱延伸時の応力は延伸速度とともに増加するが、CTAフィルムの配向複屈折は延伸速度によらずほぼ一定の値を示した。また、延伸停止後に応力は直ちに緩和するものの、配向複屈折は減少せず一定の値を示した。広角X線回折より、CTA結晶の配向は延伸停止後も緩和しないことが判明した。これらの結果より、CTAの配向複屈折は、加熱段階において形成される結晶中の分子鎖の立体配座によって決定することが判明した。結晶性高分子材料の複屈折の波長依存性を検討した。インフレーション成形とTダイ成形されたポリエチレンフィルムの複屈折を測定したところ、正の逆分散性を示すフィルムと負の正分散性を示すフィルムが存在した。分子鎖の配向度と複屈折の値は比例関係にあり、配向度とともに複屈折も単調に変化する。結晶構造の解析より、ラメラのねじれの程度によって複屈折は大きく変化し、c軸配向性が強いフィルムは正の逆波長分散性を示す傾向にあることが判明した。また、ポリエチレンは結晶化度が高いほど高屈折率であり、波長依存性も強い。すなわち、結晶と非晶では屈折率の波長依存性が異なるため、形態複屈折にも波長依存性が生じると考えられる。特定のポリエチレンフィルムでは、波長依存性が弱く正の値となる配向複屈折と、波長依存性が強く負の値となる形態複屈折が足し合わさることで、逆波長分散性を示すと考えられる。以上の結果をまとめ、学会発表、投稿論文執筆、および博士論文の執筆を行った。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
Journal of the Society of Rheology, Japan
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