研究実績の概要 |
1.クラミドモナスにおいて、6xHisタグ付加PsbPを用いてアフィニティ精製されたPSII複合体をLC-MS解析に供した。その結果、精製PSII複合体には主要なPSII膜内在性サブユニットに加え、各種膜表在性サブユニットやアンテナタンパク質が含まれていることを確認した。続いて、精製PSIIサンプルをネガティブ染色し、電子顕微鏡解析を行った。その結果、アンテナタンパク質複合体を結合したPSII-LHCII超複合体の像を検出することができた。 さらに、前年度の結果を踏まえ、同定した変異と6xHisタグ配列を持つPsbPを発現するクラミドモナス機能相補株を作出した。その結果、当該変異PsbP発現株の酸素発生活性は野生型PsbP発現株の活性よりも有意に高く、さらにPSII複合体のアフィニティ精製の結果、より多量のPSII複合体を精製できることを見出した。 本研究において構築したクラミドモナスにおけるPsbP機能相補系は、in vivoにおいて変異型PsbPの機能解析を行う上だけでなく、PSII-LHCII超複合体を簡便に単離し、その機能解析や構造解析を行う上にも有用であると期待される。
2.組換えPsbPタンパク質を用いたホウレンソウPSII膜の再構成系を、電子スピン共鳴法の一種であるPELDOR法と組み合わせ、PSII内部のTyrD・とPsbP間の距離測定を行った。部位特異的にCys残基を導入したPsbPのP20C, S82C, A111C, A186C変異体を作製し、それらCys残基側鎖にラベル化剤4-Maleimido TEMPOを共有結合させることで、PsbPに不対電子を導入した。これらラベル化PsbPをPSII膜に再構成し、TyrD・とPsbPに導入したラベル間の距離をPELDOR法により測定した結果、その距離は約51 A (P20C)、約55 A (S82C)、約58 A (A111C)、約58 A (A186C) であることが明らかとなった。本実験により得られたPsbP-PSII間距離情報は、緑色植物型PSII複合体におけるPsbPのより詳細な結合トポロジーを明らかにする上で重要な情報となることが期待される。
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