研究実績の概要 |
Defective interfering (DI)ウイルスは、DI RNA分節を取り込んだ非感染性のウイルス粒子である。DI RNAはinternal regionが欠損し、3', 5'末端のみしかもたない塩基数の短いRNAである。これまでにDIウイルスは、培養細胞でHigh MOIでの継代を繰り返すことで出現しやすいとされてきた (von Magnus et al., Adv Virus Res, 1954)。さらにDIウイルスが出現するとウイルスタイタ―が落ちることから、DIウイルスが感染性ウイルス粒子の産生を妨げることが報告されている(Nayak DP et al., Curr Top Microbiol Immunol, 1985)。しかし、DIウイルスが感染性ウイルス粒子の産生を妨げる詳細な機構については明らかになっていない。近年、感染個体内にもDIウイルスが出現することが報告されたことから、DIウイルスは生体内で何らかの機能を持っていることが考えられる (Saira et al., J Virol, 2013)。そこで本研究は、DIウイルスのゲノムパッケージング機構を明らかにすることで、DIウイルスの存在意義を解明することを目的とする。 本年度は計画通り、5種類のDIウイルスを作製し、電子線トモグラフィーを試みた。その結果、DIウイルスは野生型ウイルスと異なり、ウイルス粒子内に取り込まれているRNPの本数が少ない傾向が見られた。このことから、DIウイルスのDIセグメントが、ウイルスの選択的なRNPの取り込みに影響している可能性が示唆された。
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