研究課題/領域番号 |
15J08312
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
新谷 里美 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 間接収用 / 正当な規制 / ポリス・パワー / 補償 / 賠償 |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究結果を踏まえ、レビュー論文として「国際法上の間接収用をめぐる問題の本質」(『社会科学研究』68巻1号)を発表した。本稿においては、投資仲裁判断は先行研究において整理されるように「効果説テスト」と「性質テスト」を同一の次元で把握しているわけではなく、「合法な間接収用」という概念の存在を想定し、補償の不要な規制・補償を要する間接収用・賠償を要する違法な措置という3つの概念の区別を問題とする三分論と、「合法な間接収用」概念の存在を想定せず、いかなる金銭支払い義務も負わない合法な措置と賠償義務を負う違法な措置との区別のみを問題とする二分論という、二つの異なる理論枠組みに依拠していることを第一に明らかにする。その上で、かかる三分論・二分論それぞれの理論枠組みを提示する論考を整理することにより、二分論と三分論では前提としている「収用」概念が異なっていることを示す。具体的には、二分論者は「収用」を私人が被った損害に対し補償を行う制度と捉え、一方三分論者は「収用」を権利の移転に対し補償を与える制度であると捉える。二分論者の見解は補償の根拠を十分に示しておらず、説明になっていないという欠点を有するのに対し、三分論者の支持する権利の移転に対する補償という補償根拠論は広く受け入れられたものではないという欠点を有する。したがって、「間接収用」に関連する問題を解決するためには、そもそも「収用」という制度が国際法上いかなる制度として構想されてきたのかを明らかにする必要があることを本稿では指摘する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、「間接収用」に関連する問題を解決するために国際法上の「収用制度」そのものを見直す必要があることを示すことが最大の難関であると考えられる。この点を明らかにする論文を刊行できたことは本研究における大きな一歩である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究結果に基づき、今後は国際慣習法上、「収用制度」がいかなる制度として捉えられてきたのかという点を明らかとする。具体的には、国際法上収用が議論されるようになった1920年代以降の論考を整理・検討することにより、収用に対し補償を与えなければならない根拠はいかなるものであると捉えるのが妥当であるのかという点を明らかにし、かかる国際慣習法上の収用制度と現代投資協定における収用制度、ひいては間接収用概念との関連を明らかにする。
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