研究課題/領域番号 |
15J08332
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
木村 雄貴 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | ロジウム / [2+2+2]付加環化反応 / アルキン / らせん不斉 / 円偏光発光 / ヘリセン / キラル化合物 / π電子系化合物 |
研究実績の概要 |
本年度の研究では主として、カチオン性ロジウム錯体触媒を用いた新奇らせん型π電子系化合物のエナンチオおよびジアステレオ選択的な合成と円偏光発光材料としての応用を目的として、(1)カチオン性ロジウム/ビスホスフィン錯体を用いたS字型ダブル[6]ヘリセン類縁体の不斉合成、(2)カチオン性ロジウム/ビスホスフィン錯体触媒を用いたBanister型らせん分子のジアステレオ選択的な合成の検討を行った。 上記(1)、(2)においては、配位子、基質、反応温度などの検討の結果、いずれも高い選択性で目的とするらせん型π電子系化合物が得られることを見出した。 また触媒的な芳香環構築反応の精密化として、(3)カチオン性金/ビスホスフィン錯体触媒を用いた分子内ヒドロアリール化反応によるビアリール化合物の不斉合成、(4)カチオン性ロジウム/ビスホスフィン錯体触媒を用いたジインとアルケンとの[2+2+2]付加環化反応の検討を行った。 上記(3),(4)においてはカチオン性金/ビスホスフィン錯体触媒およびカチオン性ロジウム/ビスホスフィン系錯体触媒の優れた特性を活かすことにより、新規反応の開発に成功した。 以上のように、カチオン性ロジウム錯体触媒を用いることで合成困難であったらせん型π電子系化合物のエナンチオおよびジアステレオ選択的合成に成功した。またカチオン性金錯体およびカチオン性ロジウム錯体触媒を用いることで、従来の触媒系では実現不可能であった分子変換反応の開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたとおり、配位子、基質、反応温度など条件検討を行い、カチオン性ロジウム/ビスホスフィン錯体を用いた(1)S字型ダブル[6]ヘリセン類縁体の不斉合成、(2)Banister型らせん分子のジアステレオ選択的な合成に成功した。 (1)S字型ダブル[6]ヘリセン類縁体においては、S字型ダブル[6]ヘリセン類縁体のさらなる誘導化および構造物性相関を調べるために新たに官能基を導入したヘリセン類縁体の原料合成に着手した。 また(2)Banister型らせん分子の合成において、ビアリール骨格を有するモデル基質を用い検討を行った際に、軸の安定性に対する置換基の効果についての詳細な知見が得られた。得られた知見をもとにBanister型らせん分子をデザインし、ジアステレオ選択的な合成に成功した。 さらに触媒的芳香環構築反応の精密化を目的としたカチオン性ロジウム錯体およびカチオン性金錯体触媒を用いた新規反応の開発に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおり、誘導化されたS字型ダブル[6]ヘリセン類縁体の不斉合成を行う。合成されたS字型ダブル[6]ヘリセン類縁体と以前合成した縮環数が同じ[11]ヘリセン類縁体の円偏光発光を中心とした光物性を測定し、ヘリセン類縁体における置換基の効果と形に関する構造物性相関を明らかにする。さらに、単結晶X線構造解析により、S字型ダブル[6]ヘリセン類縁体のより詳細な構造を決定する。 またカップリング反応を用い、Banister型らせん部位をアキラルな発色団を有するπ電子系化合物に導入する。様々なπ電子系化合物にBanister型らせん部位を導入し、円偏光発光を中心とした光物性を測定する。測定結果より、アキラルなπ電子系化合物に対してBanister型らせん部位を導入することによるキロプロティカル物性への効果を明らかにする。 また得られたらせん分子とキロオプティカル物性の構造物性相関をもとに新たならせん型π電子系化合物をデザインし、その合成に着手する。
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