本研究において対象とするハニカム多孔質体(HPP)を用いた際の限界熱流束(CHF)の向上には、毛管力による液体供給の効果および蒸気排出孔に内部に直接流入する液体供給効果の2つの液体供給重要である。H28年度までの成果から、これらの各液体供給がCHF向上に対して、どの程度寄与するかについて実験的に検討し、モデル化を試みた結果、3 MW/m2を超えるような高熱流束下では、毛管力による液供給効果が支配的である。一方、高熱流束下では、発熱面上部に形成される合体大気泡がこれらの液体供給を阻害し、モデルによる予測値よりも低い値でCHFに到達する場合がある。また、この合体気泡による影響は下向き伝熱面においてより顕著である。そこで、本研究では、下向き伝熱面下でのCHF向上を目的に、上向き伝熱面下の合体大気泡の滞留に対して、有効な結果を示した二層構造HPPを用いた際の下向き伝熱面下でのCHF向上効果について、実験的に検討した。その結果、下向き伝熱面では、合体気泡の影響から、裸面と二層構造の場合のいずれも程度の差はあるが、傾斜角度の増大に伴い、CHFが減少する傾向を示した。合体気泡の影響は、裸面の場合に特に顕著で、下向き伝熱面下でCHFを向上するためには、合体気泡滞留中での伝熱面近傍の液体保持が重要であることがわかった。また、本研究で検討した全ての伝熱面姿勢において、二層構造HPPの実測値は、裸面の場合と比べて、CHFが1.6倍以上に向上した。さらに、伝熱面姿勢が同じ場合では、裸面に対する二層構造HPPのCHF促進率は、合体気泡の滞留による影響がより顕著に現れる水平真下向きの場合にその値は最大で、3倍以上に向上した。以上のように、下向き伝熱面下においても、二層構造HPPを用いた手法が合体気泡滞留中の影響の低減に有効な手段であることが示された点は、非常に興味深い。
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