放線菌の土壌培養について、昨年度までに、放線菌S. griseusの培養条件、核酸の抽出条件並びに土壌抽出液作成方法について検討を実施した。本年度は、これまでに確立した系を用い、グロースカーブを作成した。12時間おきに1週間サンプリングを計3回行い、RNAとDNAの抽出した。DNAを用い、ハウスキーピング遺伝子hrdBのコピー数を指標にグロースカーブを作成した結果、菌体がほぼ生育していないことが明らかとなった。そこで、発芽を促進する為に土培養時にカゼインを0.05%(g/gsoil)添加し再度培養を行い、実体顕微鏡並びにSEMにより観察した。その結果、明らかに添加前と比較し、気中菌糸並びに胞子形成が旺盛になっている様子が観察された。この条件で24hごとに計6日間サンプリングし、RNAとDNAの抽出を行った。グロースカーブを作成した結果、hrdBのコピー数が4日目に約1万倍になり、その後ややコピー数が減少した。以上の解析により、土壌でのS. griseusの生育の様子が初めて明らかとなった。続いて菌体が増殖している3daysとやや溶菌している5daysからRNAを抽出し、トランスクリプトーム解析に十分なRNA量の取得した。また、土壌培養抽出液寒天培地S. griseusの野生株を植菌し、1週間培養後RNAの抽出を実施した。その結果、トランスクリプトーム解析を実施可能な程度のRNAを取得した。これらのRNAを用いたトランスクリプトーム解析により、土壌での生育に必要とされる遺伝子群が明らかとなることが今後期待される。 また、放線菌と糸状菌の共培養並びに放線菌の連続観察系については、本年度は、継続して実験を実施したが、連続観察の系の確立並びに共培養による新しい知見を得るには至らなかった。今後も継続的に解析していくことで連続観察系の構築や、共培養から新しい知見の発見を目指す。
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