藍藻における有用物質生産量向上を目指して、有用物質合成系に関わる遺伝子の過剰発現や欠損、代謝系全体を制御すると考えられるグローバルレギュレーターの制御などの試みが行われている。本研究計画では、藍藻におけるバイオプロセス最適化のためのツールとして、人工small RNAに着目している。人工small RNAは、任意に選択した遺伝子の発現を制御できる。しかし、これまでに藍藻内で人工small RNAを用いた内在性遺伝子を制御した報告はない。 そこで平成27年度の本研究では、人工small RNAを開発し、藍藻が有する内在性遺伝子の制御を目的とした。制御する内在性遺伝子として、藍藻が有するグローバルレギュレーターであるrpaBを選択した。RpaBは光合成に関与する光化学系遺伝子群を制御すると考えられている。はじめにrpaBを標的とする人工small RNAの開発を行った。rpaBの発現を抑制する人工small RNAを開発するために、人工small RNAの探索を実施した。その結果、RpaB-GFPの発現を90%以上抑制する人工small RNAを計6本獲得することに成功した。この人工small RNAは、藍藻の培養温度である30°Cの培養条件においても標的遺伝子の発現を80%以上抑制できると示された。 次に、上記で獲得した人工small RNAを藍藻Synechocystis sp. PCC 6803に導入し、人工small RNAの転写誘導時のRpaB翻訳量を解析した。その結果、人工small RNAの転写誘導の培養を開始して12日後からRpaB翻訳量の減少が確認された。以上の結果から、探索により獲得した人工small RNAがSynechocystis sp. PCC 6803内でRpaBの発現を抑制できることが示された。
|