研究課題
本研究では、哺乳類の受精における膜融合を担う卵子側の因子であるJunoと、精子側の因子であるIzumo1の細胞外ドメインについて、X線結晶構造解析によって複合体の立体構造を決定し、JunoによるIzumo1認識の分子メカニズムを解明することを目的とする。昨年度までに使用していたタンパク質発現系では、大規模な結晶化スクリーニングに必要な量のタンパク質を得ることができていなかった。そこで本年度はJunoとIzumo1それぞれについて、ショウジョウバエ由来S2細胞発現系を用いて安定発現株の樹立を成功させることで、結晶化に用いるのに十分な量のタンパク質を精製することを可能にした。得られた細胞株を用いて、大量培養・および精製を行い、細胞培養上清をNiアフィニティーカラム・イオン交換カラム・ゲル濾過カラムを用いて高純度に精製する系を確立した。これにより高純度に精製されたJunoおよびIzumo1を、1 Lの細胞培養上清からそれぞれ1 mg以上得ることに成功した。これは結晶化スクリーニングを行うのに十分な量である。得られた精製Junoと精製Izumo1を1:1の比率で混合し、これを複合体の結晶を得るための結晶化スクリーニングを行った。しかし現在までに結晶は得られていない。今後はさらなる結晶化スクリーニングを行うことによりJuno-Izumo1複合体の結晶を得て、これを用いてJuno-Izumo1複合体の結晶構造を決定する。
2: おおむね順調に進展している
これまで問題であった目的タンパク質の収量の改善のため、目的タンパク質の発現系および精製系を確立することができた。得られた精製タンパク質を用いて結晶化スクリーニングを行うことができたことから、本研究員の構造解析は本年度で大きく進展した。以上のことから、本研究は本年度に順調に進展したと判断する。
さらなる結晶化スクリーニングを行うことにより目的タンパク質の複合体の結晶を得て、これを用いて複合体の結晶構造を決定する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Nature Communications
巻: 7 ページ: 1-9
10.1038/ncomms12198