研究実績の概要 |
本研究では,スピンおよび軌道自由度を有する物質における量子スピン液体状態を低温・外場下での超音波計測を用いて行い,その弾性的性質を明らかにすることが目的である.強相関電子系と呼ばれる一連の物質群では, 固体中の電子が有するスピンや軌道自由度が物性発現に重要な役割を果たす.本研究課題では, このスピンおよび軌道自由度が相関して生じる量子スピン液体状態に注目している.今年度前期は,主にFeSc2S4/MnSc2S4の試料育成を行い,化学気相輸送法によって,約300μm角の単結晶試料の育成に成功した.しかしながら,本研究課題で当初強磁場下での超音波測定を行う予定であったFeSc2S4が,すでに他グループに先行されていることが年度の途中で判明したため,対象物質を変更した. そこで, スピン及び軌道自由度を有する, 他の量子臨界点を有する物質に対象を変更した.今年度後期は,ドイツにあるドレスデン強磁場研究所に三か月滞在することで定常磁場およびパルス磁場下での超音波測定技術を習得した.まだ,進行中の研究のため詳細は伏せるが,滞在期間中も対象物質の測定を行い,大変興味深い結果を得ることに成功した.今後,この結果に関して原著論文としてまとめていく予定である.帰国後は,所属研究室において,超音波測定系の立ち上げを行い,高周波数の超音波測定を行えるような測定系に改良し,いくつかの物質に関して実際に測定を行った.
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今後の研究の推進方策 |
FeSc2S4に関して,超音波測定による測定のみならず,放射光回折実験を並行しながら,その性質を明らかにしていきたいと考えている.また,パルス磁場だけではなく圧力下での超音波計測を行っていきたいと考えている.
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