肝臓内には上皮管腔組織である胆管が樹状に張り巡らされており、重篤な肝障害時には胆管の樹状構造が大きく変化する(細胆管反応)。細胆管反応は肝障害を軽減する事が示唆されている。細胆管反応の制御機構に関しては胆管周囲の細胞集団の種類およびその細胞集団からのシグナルについては報告があるものの、胆管が樹上構造を形成する細胞内シグナルに関しては未だ多くの不明な点が残されている。研究者は、申請時に同定していた細胆管反応制御転写因子KLF5の機能解析を、肝臓上皮細胞特異的ノックアウトマウス(以下KLF5 LKOマウス)を用いて解析を行った。前年までにKLF5が細胞増殖を制御することを見出していた。今年度の研究においては以下の点が明らかになった。 ① 前年まで、胆汁うっ滞性の肝障害のみをKLF5 LKOマウスにおいて試していた。細胆管反応の制御におけるKLF5の機能をより一般化するために、肝臓の実質細胞に酸化ストレスを引き起こす肝毒素をKLF5 LKOマウスに与えた。その結果、KLF5 LKOマウスにおいても対照群と同程度に細胆管反応が誘導され、KLF5に依存しない細胞内シグナルの存在が示唆された。細胆管反応を制御するシグナルには肝障害に応じて多様性があることが明らかになった。 ② 胆管の三次元構造という視点からより詳細かつ定量的に表現型を解析した。その結果、KLF5 LKOマウスにおいて胆管の分岐点の数は減少していたが、長さや太さといった樹枝自体に差異は認められなかった。また、KLF5 LKOマウスでは、胆管細胞の一部が細胞塊として管から剥離していることも観察された。これらの結果から、KLF5が形態変化した胆管の樹枝構造を維持する可能性が新たに得られた。
今年度は成果をThe journal of biological chemistryに報告した。
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