研究実績の概要 |
プロテオーム・リン酸化プロテオーム測定に先立ち、マウス肝臓サンプルからインスリンシグナル伝達経路上の数分子のタンパク質量・リン酸化量を測定した。組織内でのリン酸化量の変動は当初想定していたよりも小さく、MASSでの測定はデータ信頼性を下げる可能性が高かったため、解析に用いるデータの測定にはウエスタンブロットを用いることとした。 ウエスタンブロットにより、PI3K-Akt経路、糖新生酵素、グリコーゲン代謝酵素、脂質代謝酵素など、インスリンシグナル伝達経路上の27分子のタンパク質量とリン酸化量を測定した。前年度のトランスクリプトーム測定同様、ウエスタンブロットデータもグルコース負荷後0分(負荷なし), 20分, 60分, 120分, 240分の時系列で取得した。 測定した時系列データに階層的クラスタリングを行い4つのクラスタに分類した。その結果、2つの増加性のクラスタと2つの減少性クラスタにわかれた。増加性の2クラスタはどちらも20分で一過的な増加を見せた。一方で減少性の2クラスタは20分から240分にかけて持続的な減少を見せた。増加性の2クラスタはインスリン受容体とその下流分子のリン酸化が含まれた。前年度のトランスクリプトーム解析により、コレステロール代謝酵素mRNAがグルコース負荷20分後に一過的増加を示すことが明らかになっている。増加性クラスタに含まれるインスリン受容体とその下流分子のリン酸化も20分一過的増加を見せており、これら分子がコレステロール代謝酵素のmRNA量制御の上流である可能性が示唆された。 また前年度に調整したマウス肝臓サンプルを用いて時系列リピドームデータを測定した。その結果、中性脂質や構成脂質はグルコース負荷による時系列変動があまりないことがわかった。
|