本研究では、トランジット観測がされるような中心星近くに存在する短周期惑星を想定した上で、物理的な根拠を持つヘイズ粒子の分布を求めるため、大気中のヘイズ粒子の生成と成長、沈降を考慮した理論モデルを新たに開発した。そして、得られたヘイズの特性を基に、大気透過スペクトルをモデル化した。
昨年度までの研究により、モデル構築が完了した。本年度は、前駆物質の生成率以外のパラメータに対する、ヘイズ粒子と気体分子の鉛直分布、大気透過スペクトルモデルの依存性を調べた。その結果、渦拡散係数とC/O比、大気の温度構造、モノマーサイズに対する、ヘイズ粒子と気体分子の鉛直分布、大気透過スペクトルモデルの依存性を調べた。その結果、渦拡散係数が大きい場合、可視域のレイリー散乱によるスロープの勾配が急になることがわかった。また、C/O比とモノマーサイズの違いは、ヘイズ粒子と気体分子の鉛直分布、透過スペクトルにあまり影響を及ぼさないことがわかった(Kawashima & Ikoma in prep.)。さらに、ヘイズの存在が示唆されており、かつ宇宙望遠鏡による高精度観測がなされている3つの低温度惑星(GJ 1214bとGJ 3470b、GJ 436b)に構築したモデルを適用することにより、各惑星におけるヘイズ粒子の前駆物質の生成率を調べた。その結果、観測されたスペクトルを説明するには、GJ 1214bについては高いヘイズ粒子の前駆物質の生成率が、GJ 3470bについては比較的低い生成率が、GJ 436bについては中程度から高い生成率が必要なことがわかった。これにより、これまで観測から示唆されていた3惑星におけるヘイズの存在が、ヘイズ粒子の詳細な理論モデリングからも示唆された(Kawashima & Ikoma in prep.)。
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