本年度は、前年度までに作製手法を確立した遺伝子発現分子デバイスへのシグナル検知機構の実装を目指した。シグナルとしては拡張性からmiRNA配列を選択し、核酸間相補鎖形成に伴い二次構造を変化させるセンサー配列を分子デバイス中因子のリンカー部分に導入したところ、シグナルに応じた因子間距離の制御が可能となった。単純なON、OFFセンサーやONセンサーを連続して導入した二入力AND回路、三入力AND回路の実装に成功し、1分子デバイス単位で機能することも確認された。また、各リンカー長や因子間距離の再設定により、三入力ANDは三入力ORや三入力多数決への変換が容易に変換可能であることも示された。さらに低分子に結合し二次構造を変化させるアプタマー配列やDNA結合タンパク質であるLacIタンパク質の認識部位をセンサー配列として用いることで、低分子やタンパク質をシグナルとしても利用可能であることが示された。これらセンサー機構の実装は、細胞内環境に自律応答する遺伝子発現デバイスや、微量miRNAからのシグナル増幅が可能という特徴を活かした医療検知デバイスへの応用可能性を広げるものである。また、遺伝子回路を構築する分子デバイスという観点では、従来の手法では実装に多種因子が必要であった三入力多数決回路を分子間距離の調節のみで実現しており、遺伝子回路の構築手法に新たな視点をもたらす結果となった。これら研究成果は、国際学会1件(RNA2016)、国内学会2件(CBI学会2016年大会、第54回日本生物物理年会)において発表を行っている。
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