研究課題/領域番号 |
15J08516
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
熊谷 洋平 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 次世代シーケンサー / 環境微生物 / 比較ゲノム |
研究実績の概要 |
平成27年度は、本格的な研究に移る前の予備的なデータを出すことに主眼を置いた。具体的な実施内容としては、①P. aeruginosa ゲノムデータベースの作成、②海洋由来P. aeruginosa 4株の選定とそのゲノム解読、③遺伝子機能解析系の立ち上げ、の二点がある。以下それぞれの項目についての詳細を記す。①P. aeruginosa ゲノムデータベースの作成:約1500株のP. aeruginosaのゲノムデータを公開データから取得し遺伝子予測と遺伝子のクラスタリングを行い、P. aeruginosaのゲノムデータベースを作成した。②海洋由来P. aeruginosa 4株の選定とそのゲノム解読:当研究室で保有する外洋由来のP. aeruginosaの世界最大のストック(36株)に対して分子系統解析を行い、ゲノム解析に適した系統的に離れたP. aeruginosaの選定を行った。選んだ株について次世代シーケンサーによるゲノム解読を行い、完全ゲノムの構築に充分量のシーケンスデータを得ることに成功した。完全ゲノムの構築作業(生データからの配列のアセンブル)は現在進行中である。③遺伝子機能解析系の立ち上げ:遺伝子機能解析系の立ち上げに関しては、既に海洋細菌の光利用と大きく関わることが示唆されている機能未知遺伝子を用いて解析系を構築した。解析系は主に二つのアプローチからなっており、一つ目が遺伝子欠損株と野生株とのフェノタイプの違いから遺伝子機能を推定する手法、もう一方は人工遺伝子合成を用いて目的遺伝子を大腸菌に組み込み大量発現させ、精製したタンパク質の性質を直接測定する手法である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の年次計画で予定していたP. aeruginosaのデータベースの作成とゲノム解読に関してはほぼ予定通り進んでいる。しかし、当初は遺伝子機能解析系の立ち上げに際してモデルケースとして扱っていた機能未知遺伝子に関して、研究を進めていく上で重要な環境ホルモンの生産に関わる酵素活性を持つ可能性を示唆する結果が得られており、この遺伝子機能の解明にも時間を取られてしまった。申請時にはP. aeruginosa及びP. putidaにおいてゲノム解析を行う予定であったが、対象を絞ったほうがより解像度の高い結果が得られるとの判断から、公開されたゲノムデータが充実しているP. aeruginosaのみで解析を行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
既に新たに4株のP. aeruginosaのゲノム抽出が完了しており、これらの株のゲノム解析を行う。すでに読んだ4株と合わせ、合計8株のP. aeruginosaを用いてゲノム解析を行っていく予定である。ゲノム解析が完了次第、すでに作成しているP. aeruginosaのゲノムデータベースを用いてオルソログ解析を行い、海洋性P. aeruginosaに特徴的に分布する遺伝子の検出を行っていく。また、当初は遺伝子機能解析系の立ち上げに際してモデルケースとして扱っていた機能未知遺伝子であるが、高等生物の奇形を引き起こす環境ホルモンの生産に関わる可能性が浮上したため、この遺伝子の機能測定も引き続き行っていきたい。
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