研究課題
本研究ではDNAのメチル化やヒストンのアセチル化といった種々のエピジェネティック修飾を、がんをはじめとする種々の疾患の早期・術中診断の指標として利用することを想定し、アルカリフォスファターゼ融合ジンクフィンガー蛋白質(ALP融合ZFP)の開発、及びそれを用いた複数の網羅的エピジェネティック修飾修同時検出システムの開発を目的として研究を進めた。平成27年度はまず、ALP融合ZFPの遺伝子構築及び大腸菌による組換発現、そして精製後蛋白質の特性評価を行った。大腸菌由来のALP遺伝子をペプチドリンカーを介してZFP遺伝子に融合し、大腸菌BL21(DE3)を用いて組換発現を試みた結果、最適な培養条件の検討に成功し、ALP融合ZFPを得ることができた。また、組換生産したALP融合ZFPはアフィニティークロマトグラフィーを用いた精製を行い、精製蛋白質を得ることにも成功した。精製後の蛋白質の特性評価を行った結果、野生型の100分の1程度のALP活性を有すること、また野生型と同程度のDNA結合能および配列特異性を有することが分かった。本蛋白質を用いることで、従来用いていたグルコース脱水素酵素融合ジンクフィンガー蛋白質よりも高感度に標的のDNAの検出を行えることが分かった。今後は、ALP融合ZFPの活性を、電極を用いて電気化学的に検出する際の条件を検討する。そして、レドックスサイクルを利用することにより、標的のDNAを電気化学的にかつ、化学発光を用いた場合よりも高感度に検出することを目指す。また一方で、リヨン第一大学のLoic. J. Blum教授との共同研究により、ALP融合ZFPを用いて複数の標的DNAを同時に検出するためのシステムの開発も進めており、既に基板上にプリントした複数の合成DNAを検出することに成功している。今後は実サンプルの検出を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
アルカリフォスファターゼを融合したジンクフィンガー蛋白質の組換生産、精製条件の検討に成功しており、精製後の蛋白質の特性評価まで計画通り進んでいるため。また、精製したアルカリフォスファターゼ融合ジンクフィンガー蛋白質を用いて標的のDNAを感度良く検出できることも既に検討済みである。
今後は、ALP融合ZFPの活性を、電極を用いて電気化学的に検出する際の条件を検討する。その際基質として、p-アミノフェノールを用いることで電気化学的なレドックスサイクルを利用し、標的のDNAを感度良く検出することを目指す。具体的には、化学発光を用いた場合よりも1000倍高感度に検出することを目指す。また、リヨン第一大学のLoic. J. Blum教授との共同研究も引き続き行い、複数の実サンプルから得られたPCRサンプルを一度の測定で検出するシステムの開発を来年度中に完了させることを目指す。
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Electrochemistry
巻: 83(12) ページ: 1085-1090
http://dx.doi.org/10.5796/electrochemistry.83.1085