研究課題
本研究ではDNAのメチル化やヒストンのアセチル化といった種々のエピジェネティック修飾を、がんをはじめとする種々の疾患の早期・術中診断の指標として利用することを想定し、アルカリフォスファターゼ融合ジンクフィンガー蛋白質(ALP融合ZFP)の開発、及びそれを用いた検出システムの開発を目的とし、研究を進めた。平成28年度はまず、ALP融合ZFPの標的DNAへの結合能の評価及びALP活性の詳細な評価を行った。ALPのN末端にZFPを融合した場合約2 nM程度のKdが、C末端に融合した場合では約1 nM程度のKdが算出された。このことから、いずれの末端に融合した場合でもZFPは十分な結合能を保持していることが分かった。また、ALP活性を、pNPPを基質として算出したところ、それぞれ約50 U/mg、及び約45 U/mgとなった。このことから、融合する末端の違いはALP活性にはあまり影響しないことが分かった。また、グルコース脱水素酵素を融合したZFPを用いたメチル化DNAの検出法の開発も試みた。結果として、従来法より短い時間で、前立腺がんの診断の指標となる遺伝子領域におけるDNAメチル化レベルの検出に成功した。本結果については診断分野の最高峰の学術誌であるBiosensors and Bioelectronics誌に報告した。今後、より簡便かつ高感度なエピジェネティック修飾の検出法開発が期待できる。一方で、リヨン第一大学のLoic. J. Blum教授との共同研究により、ALP融合ZFPを用いて複数の標的DNAを同時に検出するためのシステムの開発も進めており、こちらは平成29年度中の論文投稿を目指す。
2: おおむね順調に進展している
アルカリフォスファターゼを融合したジンクフィンガー蛋白質の詳細な特性を評価し、標的DNAの検出に成功していること、また、グルコース脱水素酵素を融合したジンクフィンガー蛋白質を用いたDNAのメチル化の電気化学的な検出法の開発にも成功していることを踏まえ判断した。
今後は、特性評価を行ったアルカリフォスファターゼ融合ZFPを用いて実際にエピジェネティック修飾の検出を試みる。最終的には小型の電極を用いた簡便な診断用のセンサーの構築を目指す。リヨン第一大学のLoic. J. Blum教授との共同研究により、ALP融合ZFPを用いて複数の標的DNAを同時に検出するためのシステムの開発も進めており、こちらは平成29年度中の論文投稿を目指す。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Biosensors and Bioelectronics
巻: 93 ページ: 118-123
http://doi.org/10.1016/j.bios.2016.09.060
巻: 93 ページ: 26-31
http://doi.org/10.1016/j.bios.2016.11.042