本研究ではDNAのメチル化を始めとするエピジェネティック修飾を、がんをはじめとする種々の疾患の早期・術中診断の指標として利用することを想定し、アルカリフォスファターゼ融合ジンクフィンガー蛋白質(ALP融合ZFP)の開発、及びそれを用いた検出システムの開発を目的とし、研究を行った。 平成29年度は、ALP融合ZFPを用いた種々の標的DNA検出システムの構築を行った。 まず、ALP融合ZFPによって標的のDNAを検出できるかをプレートアッセイによって確かめた。標的DNAのモデルである大腸菌O157のゲノムDNAを検出したところ、標的DNAの濃度に依存してシグナルが上昇し、10コピーの感度から検出することができた。一方で、標的ではないサルモネラ菌のゲノムDNAを検出した際にはシグナルの上昇が観察されなかったことから特異性にも優れた検出法であることが示された。 また、小型で高感度な標的DNAの検出系を構築するため、チップ電極を用いた標的DNAの電気化学的な検出システムの開発も行った。ここではプレートではなくアビジンビーズ上に標的DNAを固定しALP融合ZFPによる検出を行った。ビーズと基質であるp-aminophenyl phosphateを混合し、酵素反応によって生じる反応生成物をチップ電極上で検出することで、電気化学的に標的DNAの検出を行った。結果として、グルコース脱水素酵素を用いた場合よりも100倍程度高感度に標的DNAを検出することができた。 以上本年度は、ALPを融合したZFPを用いて化学発光、または電気化学的なシグナルに基づく標的DNAの検出システムの構築を行った。昨年度Biosensors and Bioelectronics誌に報告したDNAのメチル化検出法と、本検出法を組み合わせることで、より高感度なDNAメチル化の検出が期待できる。
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