{Fe(pz)[Pt(CN)4]}(pz = pyrazine: 1)を用いて室温での気体分子に対する応答性を評価したところ、一酸化炭素(NO)のみで吸着挙動を示し、赤紫色を示す低スピン状態(LS)から黄色を示す高スピン状態(HS)への変化が観測され、ガス分子によるスピン状態の変換に成功した。固体電気化学および電子スピン共鳴測定から、一酸化窒素の吸着により骨格構造のFe(II)が可逆的にFe(III)に酸化されることで吸着が促進されていることを見出し、吸着およびレドックス、スピン状態変化の連動に成功した。また、{Fe(pz)[Pd(CN)4]}(2)にヨウ素を吸着させて、細孔内でのI2分子の挙動とスピン転移の相関について検討したところ、非常に大きな磁気ヒステリシスを示した。I2の状態についてin situ粉末X線回折とラマンスペクトルの同時測定を行うと、室温における高スピン状態では、I2の配置はディスオーダーしており、低スピン状態では、I2は細孔内に規則的に配列していることがわかった。これらの結果より、細孔内におけるI2分子配列の無秩序-秩序転移がホスト骨格のスピン転移と同期することで、幅広いヒステリシスを伴ったスピン転移が起きる機構が明らかとなった。他にも、PCPsの骨格構造中に混合原子価状態を形成する{Ru(pz)[Ni(CN)4]}(3)を合成し、その電気伝導性とゲスト応答性について評価した。3は室温において絶縁体であったため、3にI2を吸着させたところ、I2包接体(3⊃I2)の電気伝導度は3よりも飛躍的に向上した。さらに、加熱減圧によりI2を除去すると、3と同様の絶縁体に戻った。固体状態での電気化学測定ではRuII/IIIに由来する酸化還元波が観測された。3⊃I2のIRスペクトルではpz領域の吸収が変化していたことから、細孔内でI2がpzと相互作用して分極することで、Ruの混合原子価状態が誘起され電気伝導性が向上したと考えられる。
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