本研究では、植物病原細菌が宿主植物を認識し、病原性を発現する過程には、細菌が持つノンコーディングな短いRNAである、小分子RNA(small RNA; sRNA)が関与しており、sRNAが病原性関連遺伝子の発現を制御することで病原性が発現するという仮説のもと、病原性に関与するsRNAを網羅的に同定するとともに、そのターゲット遺伝子の同定や、既知の病原性遺伝子との関係性を調べることで、細菌の病原性発現に至る遺伝子制御ネットワークの全貌を解明することを目的としている。本年度は、植物病原細菌のsRNAの配列を網羅的に決定することを目的に研究を行った。まず、sRNAの網羅的配列決定方法を確立するための予備実験を行った。植物病原細菌に感染した植物からRNAを抽出し、それを鋳型として逆転写反応を行い、cDNAを合成した。そのDNAをもとにDNAライブラリーを調製し、大規模塩基解読装置による配列解読を行った。その結果、大規模塩基解読装置により出力されるデータ量が想定よりも大幅に少なかった。このことにより、従来のRNA抽出方法やDNAライブラリー構築方法がこの解析に不向きである可能性が判明した。そこで、健全植物を用いてRNA抽出方法の詳細な検討を行い、最適な抽出条件を決定した。さらにRNAから調製されるDNAライブラリーの構築条件を詳細に検討した。その後、平成28年度への繰り越し予算を利用し、検討した条件通りに網羅的配列解読を行った。その結果、十分量の配列データを得ることができた。
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