本年度は、前年度までに解読した、植物病原細菌が発現しているRNAの配列を細菌ゲノムにマッピングした。その結果、全リードの内、約4-12%が細菌ゲノムにマッピングされた。その内約96-97%がrRNAまたはtRNAにマッピングされ、残りの3.5-3.8%がそれ以外の領域にマッピングされた。この、rRNAまたはtRNA以外にマッピングされるリードについて、5'末端が共通する位置にマッピングされたリードが3本以上ある箇所をRNA転写開始点として、ゲノム全体の転写開始点を解析したところ、231箇所が特定された。次にこれらの転写開始点を4つのカテゴリー(mTSS、iTSS、asTSS、oTSS)に分類した。mTSSはORFの上流500塩基以内にORFと同じ向きに存在する転写開始点、iTSSはORF内部にORFと同じ向きに存在する転写開始点、asTSSはORF内部にORFと反対向きに存在する転写開始点、oTSSはmTSS、iTSS、asTSSいずれにも属さない転写開始点である。その結果、mTSSは82箇所、iTSSは88箇所、asTSSは31箇所、oTSSは30箇所特定された。このうち、asTSSについて下流にORFの存在が推定されないことから、転写されるRNAはノンコーティングRNA(小分子RNAを含む)と考えられた。また、oTSSについては、30箇所の転写開始点の内、24箇所が下流にORFが推定されなかったことから、ノンコーディングRNAが転写されていると考えられた。asTSSとoTSSを合わせると、231箇所の転写開始点の内、59箇所から転写されるRNAがノンコーディングRNAであると考えられた。以上より、ゲノム全体でノンコーディングRNAが数多く転写されていることが示唆された。
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