29年度の成果は二つの方向性にまとめることができる。(1) 受動軸と能動軸を切替え可能な脚型ロボットの開発と (2) 準受動歩行生成制御ソフトウェアの開発と身体モデルパラメタ修正に基づく歩行行動実現である。
(1) 両膝・太股関節ピッチ軸を能動軸と受動軸とで切り替え可能な拘束解放可変機構(クラッチ)を備える等身大脚型ロボットを開発した。ロボットは両脚12自由度を有し、根元の太股ヨー軸を除いてブレーキ機構も取り付けた。受動軸・能動軸・固定軸を切り替えることのできるロボットとして新しい試みであり本研究課題で示した準受動歩行に限らない受動軸を用いた応用に発展可能なロボットであると考えている。 (2) 拘束解放可変機構を用いた歩行実現には二つの課題が存在した。一つは受動軸の動力学を考慮しつつ全身の関節を駆動することでバランスを維持する歩行生成器・制御器の開発である。開発したロボットは脚付け根の太股関節が受動軸となるため膝下の能動軸を用いて上半身を前後させ太股を駆動するという複雑な全身運動が必要となるものであり、順動力学シミュレーションと進化計算を組み合わせた方法により歩行モデルパラメタ生成を行うソフトウェアを開発した。さらに実ロボットでの行動実現で考慮すべき条件を実験を通じて追加していく作業も必要であった。もう一つの課題は実ロボットの歩行行動結果がシミュレーションと異なる問題である。シミュレーション空間での行動結果が現実に近くなるよう身体と環境のモデルパラメタを探索することで行動実現を達成した。準受動歩行時の単位移動量あたりの消費エネルギーは従来の膝を曲げた歩行と比べ5倍以上改善、最適化された能動歩行と比べて10%程度改善し拘束解放可変機構が省エネルギー歩行に有効であることが示された。
完成したロボットと歩行実現についてはまだ論文発表が行えていないため、その準備が課題として残されている。
|