細胞の分化制御のメカニズムの研究は再生医療においてその基礎となるものである。ES細胞の分化においてはERK1/2 MAPK経路が非常に重要な役割を果たすことが知られている。また、T-box転写因子も発生過程における細胞分化において働くことが知られている。 本研究はT-box転写因子とERK1/2 MAPK経路による多能性幹細胞の分化制御機構を明らかにすることを目的としている。私は、自身が作成した複数のT-box転写因子のノックアウトES細胞の分化誘導を行い、遺伝子発現等を解析することによって、T-box転写因子の必須の役割を示す結果が得られた。ノックアウトES細胞と過剰発現の実験による解析から、異なるT-box転写因子ごとに特異的な役割も存在することや、T-box転写因子の発現量を制御する機構の存在を示すデータも得られている。また、ERK1/2 MAPK経路が直接、T-box転写因子を制御するかどうかについては明確な結果は得られなかったが、ERK1/2 MAPK経路によってT-box転写因子の発現が制御されていることを示す結果が得られており、T-box転写因子とERK1/2 MAPK経路の関わりについての知見も得られた。以上のようにT-box転写因子とERK1/2 MAPK経路によるES細胞の初期分化の制御について明らかにすることができた。
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