研究課題
本研究は、奄美大島に侵入した外来捕食者マングースと、在来被食者アマミハナサキガエル、及びその下位栄養段階である地上徘徊性生物を対象に、外来種に対する在来種の急速な進化的応答とその波及効果の解明を目的としている。採用第2年度であるH28年度は、主に、研究1、研究3、研究4に関する長期の野外調査を中心に行った。研究1及び研究3に関しては、アマミハナサキガエルの形態や採食生態、行動生態などへの影響を明らかにするため、マングースの侵入履歴の異なる奄美大島の多数の地域において、形態計測や胃内容物の採取、地上徘徊性生物相の調査やテレメトリー調査を行った。研究4としては、マングースが侵入していないコントロール地域として、隣接する徳之島において同様の調査を行った。その結果、奄美大島内において地上徘徊性生物の構成に大きな変化がないものの、アマミハナサキガエルの餌選好性に地域差がみられた。現在解析を進めている。また、奄美大島と徳之島のアマミハナサキガエルにおいて、系統的に離れた競争種からの解放による生態的形質置換の可能性が示唆された。これは島嶼域における表現型分化現象の解明に資する成果であると考えられる。それらの成果の一部を、第55回日本爬虫両棲類学会及び、第64回日本生態学会においてポスター及び英語口頭発表を行った。また、関連成果の一部を国際爬虫両棲類学会が出版している国際誌Herpetological Review誌へ2報の論文の掲載が決定した。また、さらに一報を近日中に国際誌に投稿予定である。来年度はこれまでに収集したデータの解析を進めるとともに、データ不足分の野外調査、投稿論文の執筆を中心に行っていく。
2: おおむね順調に進展している
外来マングースが侵入している奄美大島および、侵入していない徳之島において、アマミハナサキガエルの形態や採食生態、行動生態、地上徘徊性生物相などについて多くのデータを集めることができた。それらの成果の一部を、第55回日本爬虫両棲類学会及び、第64回日本生態学会においてポスター及び英語口頭発表を行った。また、関連成果の一部を国際爬虫両棲類学会が出版している国際誌Herpetological Review誌へ1報の論文が掲載され、さらに1報の掲載が決定した。
今後は、これまでに収集した行動、形態、採食物構成、地上徘徊性生物相等のデータについて島嶼間、島嶼内での比較検討をしながら解析を進めるとともに、投稿論文の執筆を中心に行っていく。その過程で、アマミハナサキガエルと下位栄養段階との基礎的な関連や外来マングースの影響の程度について検討していく。また、データの不足分を補うため、奄美大島及び徳之島において、行動生態、繁殖生態等に関する野外調査を行う。必要に応じて、外部研究機関の研究者の方々と協力して本課題に取り組んでいく。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Herpetological Review
巻: in press ページ: in press
巻: 47 ページ: 645, 646
Acta Arachnologica
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富士山研究
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