研究課題/領域番号 |
15J08774
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
都筑 正行 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | microRNA / ゼニゴケ |
研究実績の概要 |
平成27年度は、新規モデル植物ゼニゴケにおいて、未だ同定されていなかったmicroRNA(miRNA)の網羅的同定を行い、ゼニゴケにおけるsmall RNAの全体像を把握することができた。また、保存度の高いmiRNA変異体を作出することに成功し、miRNAがゼニゴケにおいても発生に重要であることを示唆するデータを得ることができた。ゼニゴケmiRNAの網羅的同定に関して、本年度Plant & Cell Physiology誌において投稿論文を一報掲載することができた。 まず、次世代シーケンサーを用いたsmall RNAシーケンシング、そしてプログラムを用いた比較解析により、ゼニゴケにおいて発現しているmiRNAを205ファミリー同定した。そのうち、被子植物であるシロイヌナズナとの間では6ファミリー、同じくコケ植物のヒメツリガネゴケとの間で9ファミリーのmiRNAのみが保存されていた。また、他種との間で保存されているmiRNAに関しては標的遺伝子の推定も行い、miRNA同様標的遺伝子側も保存されていることを明らかにした。続いて、miRNA欠失変異体に関して、当初用いる予定だった相同組換え法を試したが、胞子培養等の技術的困難さのためそれを用いた変異体の作出は失敗した。今年度の途中に、京都大学河内孝之研究室および西村いくこ研究室によって開発されたCRISPR/Cas9のゼニゴケ用ベクターを提供して頂いたため、これを用いることにした。その結果、保存されたmiRNAのうちmiR160、miR166、miR319、miR529cの欠失変異体を作出することに成功した。また、これらの欠失変異体は形態異常、異常な分化をしているものも観察され、miRNAがゼニゴケにおいても重要な役割を持っていることが示唆されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
標的遺伝子の推定および変異体の作出に関しては、当初予定していた方法とは異なる方法を用いたが、行うことができた。当初予定していた顕微鏡を用いた詳細な形態解析に関しては、ゼニゴケの形態の複雑さが原因で苦戦しているため、定量的ではなく定性的に説明可能な表現型を持つ変異体を優先して解析している。成果報告に関しては、今年度Plant & Cell Physiology誌に発表することができている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、作出したmiRNA欠失変異体の表現型解析を中心に、miRNAのゼニゴケにおける機能を明らかにする。また、モデル植物として確立している被子植物シロイヌナズナにおけるmiRNAの機能との相同性に着目し、miRNAの普遍的な役割を明らかにしたい。具体的には、miRNAに抑制されない変異型標的遺伝子の導入、および欠失変異体のトランスクリプトーム解析を行う。そして、これらの結果を論文公表、および学会発表を行い報告する。
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