研究課題/領域番号 |
15J08786
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
横路 佳幸 慶應義塾大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
キーワード | 同一性 / 種別概念 / 形而上学 / 認識論 / 哲学的心理学 / 言語哲学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、D. Wigginsによる「同一性の特殊な絶対主義」あるいは「概念主義的実在論」に基づき、同一性関係・概念を形而上学・言語哲学・哲学的心理学・メタ倫理学の観点から解明することである。前年度の基礎研究を踏まえ、平成28年度はこれら領域すべてに取り組んだ。 まず、同一性述語についての意味論的研究を行い、種別概念パラメーターを指標内に措定する同一性述語についての非指標的文脈主義を展開した("Butler's Distinction Defended")。これは、同一性の特殊な絶対説を支える意味論的基盤となる点で、着実な進展となった。次に、その応用的な研究として、事実と価値評価の二つの部分から成るいわゆる「分厚い語」に対しても非指標的文脈主義を適用する利点を検討した(「非認知主義・不定形性・もつれのほどき」)。この成果により、種別概念が道徳的性質と類似した重要な特徴を持つという考えを得ることができた。さらに、同一性についての哲学的心理学の研究も遂行し、個物同定において種別概念の把握を求める認識的な種別概念論の可能性を検討し、認知心理学に依拠した反論に適切な応答を与えることで擁護した。くわえて、不可識別者同一の原理の妥当性をめぐる問題を解決するために、同一性の二つの相に関する形而上学的理論の体系化に向けても一定の見通しを得ることができた。 以上の平成28年度の研究成果により、同一性の体系的な統一理論である「概念主義的実在論」がどのような理論的枠組みを持ち、いかなる特色と効果を持つのかについて理解を深めることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画の通り、同一性の解明を各分野、特に言語哲学とメタ倫理学、哲学的心理学の分野から発展させることができ、かつその体系化としての立場である「概念主義的実在論」に向けた足掛かりを得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策としては、同一性の様々な観点からの解明を理論的に体系化するための統一理論を構築・精緻化することに努める。また、同一性の形而上学・哲学的心理学・メタ倫理学に関する口頭発表を行うとともに、平成28年度の研究成果を順次論文の形にし、学術誌に投稿することを予定している。
|