日常生活に隠れたエネルギーを取り出すenergy harvesting技術が近年、注目を集めている。その中でも、廃熱を電気に変換する熱電材料が精力的に研究され始めている。受入研究室ではこれまでに、分子および電子構造に着目して高移動度有機半導体の開発を行ってきた。本研究では高移動度有機半導体へのドープによる高伝導材料の開発および高効率な熱電材料への応用を目指した。 まず始めに、新規なp型半導体高分子の合成を検討した。当研究室では大きなπ平面と強いアクセプター性を有するNTzの安定かつ大量合成に成功している。そこで、NTzと各種ドナー性ユニットを組み合わせたドナー・アクセプターポリマーの開発と、そのトランジスタ特性の調査を行った。ドナー部位としては広いπ共役系および高い溶解性を有するIDTを選択した。鈴木-宮浦クロスカッップリング反応によって合成したポリマーはMn = 16000の分子量を有し、400-800 nmと広い吸収帯(バンドギャップ1.65 eV)と、-5.50 eV程度のHOMOレベルを持つことがわかった。 得られたポリマーを用いて、スピンコート法を用いてボトムゲート・トップコンタクト型の素子を作成し、その評価を行ったところ、最大で0.11 cm2/Vsのホール移動度を示した。今後はより高分子量の材料を開発することで移動度の向上を目指すとともに、各種ドープの方法を検討し、伝導体の開発を行って行く。 また、新規にフルオロアントラセン骨格を有するアクセプター分子 F6-TANT、F8-TANTの合成を検討した。これらのDFT計算から見積もられたLUMO準位はそれぞれ-5.17、-5.24 eVである。それぞれoctafluoroanthracene、decafluoroanthraceneを出発原料として合成を検討した。
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