研究課題/領域番号 |
15J08821
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
泉 賢太郎 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 生痕化石 / 中生代 / 堆積岩 / 底生生態系 / プランクトン微化石 |
研究実績の概要 |
中生代には海洋生態系がそれ以前と比べて劇的に変化したことが知られているが、これらの知見の大半は体化石記録から得られたものである。そのため、体化石として保存されやすい硬組織を持たない底生生物(以下、soft-body底生生物)を中心とする生態系の変化については、知見が限られている。しかし、soft-body底生生物は現代の海洋底生生態系において、バイオマスや多様性の点で非常に重要なので、中生代の生態系変化の全容解明のためには、soft-body底生生物に関する知見が不可欠である。 本研究では、生痕化石に注目することでsoft-body底生生態系の変遷パタンを実証し、その上で数理生態モデルを構築することで生態系変化の具体的要因を制約する、ということを主目的としている。平成27年度は当初のスケジュール通り、主に「生痕化石記録からの実証」に主眼を置いて研究を進めた。重点的に研究をしているPhymatodermaという生痕化石の新規標本の発見や、モデルの中核となる現象である「小型生痕によって選択的に乱された生痕化石」の新規発見を目的として、国内外で野外地質調査を実施した。 特筆すべき成果としては、イギリス調査において新たに生痕化石Phymatoderma(厳密には、cf. Phymatoderma isp.)を発見した。さらに、上総層群国本層の調査において、小型生痕に選択的に乱された生痕化石の産出を新たに発見した。これらの産出記録は、本研究の作業仮説と整合的である。 また、並列した行った系統的な文献調査の結果、新たに複数の海外の地層からPhymatodermaの産出報告を発見した。記載データを検討したところ、本研究の作業仮説に整合的なトレンドを示すことが分かった。 さらに、採取したPhymatoderma標本について薄片を作成し、生痕化石中に産出する微化石の観察も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2015年度は主に野外調査に基づく生痕化石の研究に積極的に取り組んだ。実施したすべての野外調査で当該研究に必要かつ重要な結果を得たわけではないが、上述したように一部の野外調査(特に英国での調査と千葉県市原市における調査)では当該研究の作業仮説と整合的な結果を得た。さらに並列して行った文献調査からも、当該研究の作業仮説を裏付けるデータを発見した。 一方で、作業仮説のメカニズムの検証のために、新たな数理生態モデルを構築することを計画しているが、こちらについてはモデルの構築まで至っていないのが現状である。しかし、ゼロから新しいモデルを構築するにはある程度の時間がかかるので、2015年度内に結果が出なかったとしても、それは想定の範囲内であり、当該研究の全体的な進行には大きな問題はない。モデルの基本設計とプログラミングの準備は進めているので、2016年度中にはシミュレーションを行えるようになると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、初年度と同様、生痕化石データの拡充を引き続き継続していく。特に、申請者が重点的に研究しているPhymatoderma、Phycosiphon, Chondritesといった種類の生痕化石を重要研究対象にする。 当該研究では、中生代における海洋プランクトンの進化が、soft-body底生生態系の大規模変遷の究極的な引き金になったと想定しているため、生痕化石中に保存されたプランクトン微化石や残存有機物についてのデータも拡充していく。 併せて、中生代のsoft-body底生生態系の大規模変遷を引き起こした具体的なメカニズムを検討するために、新たな数理生態モデルを構築するべく研究を行う。究極的な要因として中生代のプランクトン進化が考えられる一方、soft-body底生生物が実際に直接的に影響を受けるのは、底質の状態や他の底生生物との競合といった別の要因であると想定される。したがって今後は、これらsoft-body底生生態系の変化の直接的な要因と考えられる少数の要素に特に注目して新たな数理生態モデルの構築を目指す。これにより、どのような要素がどの程度重要であったか、ということが明らかになると考えられる。 具体的には、海底堆積物の鉛直断面の空間構造を明示的に表現するモデルの構築を目指す。すなわち、堆積物断面を鉛直方向に複数個のセクションに分割し、各々のセクションにおいて有機物量や競争の程度といったパラメータをそれぞれ変化させる。採用2年目は特に、少数の本質的に重要な要素のみを組み込んだ、モデルの基本的な骨格を作成することを目指す。
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