今年度は、昨年度に実施したタヌキの予備的な追跡調査データの詳細な分析と都心部におけるタヌキの追跡調査、食性分析のための広域における糞の採集をおこなった。 昨年度に捕獲・追跡をおこなった1個体における詳細な分析の結果、この個体の行動圏は47.1haであることが分かり、東京農工大学府中キャンパスの外側も多く含まれることが明らかになった。また、コアエリアを推定したところ、2箇所の休息場付近や餌場と見られる場所が抽出された。さらに、府中キャンパスの縁や周辺の住宅街の一部を移動経路として利用していることが推定された。 2016年度は、東京大学小石川植物園および光が丘公園においてタヌキの捕獲と追跡調査を実施した。小石川植物園では、2016年2月に2頭(KBG-M1、KBG-M2)、3月に1頭(KBG-M3)、12月に1頭(KBG-F1)のタヌキを捕獲し、発信機の装着をおこなった。このうち、3個体からは追跡データを得ることができた。KBG-M2は夜間の2時間ごとの位置情報が29点、KBG-M3は169点、KBG-F1は296点を得ることができた。また、KBG-F1については、夜間の5分ごとの詳細な追跡データを1777点得ることができた。光が丘公園では、2017年1月に1個体を捕獲することができ(HOP-F1)、この個体は夜間の2時間データを84点、5分ごとの詳細なデータを977点得ることができた。これらのデータは詳細な分析をおこなっているところである。 食性分析については、昨年度に引き続き、都心部から郊外にかけて分析に用いる糞の採集をおこなった。2015年11月から2017年2月までの間に49箇所のタメフン場を発見し、総計838個の糞を採集した。今後、糞の内容物分析を進め、都市化とタヌキの食性について解析する予定である。
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