本年度は、地球低軌道のプラズマ環境における宇宙機の帯電を計算するため、マルチグリッド法を用いた新規宇宙機帯電計算用のFull Particle-in-cellコードの開発を行い、その計算検証を行った。 新規開発したコードFOPISは、MPIによる領域分割とOpenMPによるスレッド並列化の両方を用いており、3次元静電/電磁解析が可能である。計算の検証については、静電解析モードを用いて、地球静止軌道環境(GEO)から地球低軌道環境(LEO)への背景プラズマ環境遷移における帯電電位計算を行った。その結果、静電計算は概ね正しいが、引き続き計算の検証が必要であることが明らかとなった。FOPISはオープンソースソフトウェアとして開発を続けていく予定であり、今後は静電計算に加えて電磁計算の検証も行う予定である。 また本年度後半は、これまでの修士課程/博士後期課程で得られた成果を博士学位論文としてまとめ、3月26日に博士(工学)の学位を授与された。本論文は、近年提案された「宇宙機帯電を用いた宇宙機推進・軌道制御手法」の実現に向けた基礎研究として、能動帯電モデルの構築及び帯電を用いた推進手法に関する検討についてまとめられたもので、特に宇宙機の能動帯電とそれを用いる推進・軌道制御手法について電磁気学、宇宙プラズマ物理学に基づくモデル構築、および、シミュレーションによる検証を行った結果をまとめたものである。
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